マンション節税、これ以上はアウトかセーフか 90歳は大丈夫?10億円でもOK?全額借金は?

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この例外規定が適用される条件に対しては、抽象的であり、明確な基準はまだ示されていない。そこで今後の不動産投資で疑問になる点について、私見ではあるが、問答形式で説明しておきたい。

質問1:判決で決め手になった「相続税対策が目的」とはどんなときに当てはまるのか。

答1:ダメなのは「相続税の軽減を主たる目的で行っている」ことだ。裏返せば、不動産の取得が、自宅としての利用や不動産賃貸を含む事業での利用など、経済合理性があり、副次的に相続税の軽減につながるケースは、原則として該当しないと考えられる。

質問2:不動産の購入金額の大小は影響してくるか。

答2:不動産の購入金額は直接関係ない。ただし、購入金額と通達評価の乖離は、一般的に購入金額に比例して大きくなる。被相続人の資産に比べて不相当に大きな金額の投資は、「相続税対策が目的」とみなされやすくなる恐れがあり、注意が必要だ。

質問3:不動産投資をする被相続人の年齢は関係するか。

答3:例えば、高齢者が賃貸収益を得る目的のために、不動産投資をした後で、不幸にも短期間で死亡したとしよう。結果的に、その人は賃貸収益を十分に得られないまま、亡くなったことになる。そのため「相続税対策」を目的としていたのではないか、と税務署にみなされやすくなる可能性がある。

質問4: 銀行借入で不動産投資する際に気をつけるべき点はあるか。

答4:不動産の購入資金は自己資金でも銀行借入でも、不動産の通達評価に与える影響は同じだ。ただし、全額借入など借入金の割合が大きいと、当初は不動産の「通達評価-借入額」がマイナスで、相続税計算上、固有の財産額から控除される。ケース次第では、「税負担の著しい軽減」とみなされやすかったり、高齢者の借入期間が平均余命より明らかに長かったりする場合、購入目的に経済合理性は認めづらい。

過度な不動産節税に警鐘を鳴らした司法

最後に、財産を所有している高齢者が事業の拡大や将来の遺産分割を視野に、不動産の売買で資産の組み替えを行うことはある。その際、相続税のことを考慮に入れて検討を行うのは、一般的なことだ。

最高裁の判決は、過度な不動産節税に警鐘を鳴らしたもの。今後、特に高齢者が相続税の軽減を考慮に入れて不動産投資を行う場合、より慎重な判断が必要である。

清三津 裕三 税理士法人山田&パートナーズ パートナー、税理士

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しみず・ゆうぞう / Yuzo shimizu

従業員800人超を誇る総合型の税理士法人山田&パートナーズのパートナー。相続・事業承継等を中心とした申告やコンサルティングを担当。顧客や金融機関向けの講演も多数。

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