日本のメガネ屋「インド企業と経営統合」のなぜ オンデーズがレンズカートと組む狙いとは

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「ECに誘客しようと思っても、システムの構築や運営を外注していると施策を実行するにも時間がかかる。ECを作るだけでは足りず、店舗、製品も含めてDXを徹底し、取得できるデータを分析して生かすことが今後10年の勝負を分ける要になるとわかっていた。けれどもIT企業でもメーカーでもない僕たちは、テクノロジーの専門家をそろえられない。DXの必要性と、自前でやることの限界の両方を認識した」と田中社長は語る。

一方でレンズカートは、ECに強みを持つ。同店舗のアプリは、ユーザの輪郭データを読み取り、個々人に似合う眼鏡を表示する。バーチャルでの試着も可能で、1~2日で眼鏡が自宅に届く。レンズカートは、インドを中心にシンガポールやドバイなどにも進出し、1100以上の店舗も展開している。

同社の共同創業者でCEOのPeyush Bansalと田中社長は5年以上の親交があった。田中社長は個人的な近さだけでなく、レンズカートの技術面でのプレゼンを聞いたときに、「手を組めばアジアでナンバーワンになれる」とイメージができたという。

ファーウェイとも製品を共同開発

田中修治(たなかしゅうじ)/1977年埼玉県生まれ。10代の頃から起業家として活動し、企業再生案件を中心に事業を拡大。2008年に眼鏡の製造販売を手がける小売りチェーン、オンデーズの筆頭株主となり、同年から現職。2013年にシンガポール法人、2014年に台湾法人を設立。著書に『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』がある(写真:今井康一撮影)

「レンズカートの規模は大きいけれど、インド以外にはあまり出ておらずECが中心だ。僕らは店舗の売り上げが大きく、海外市場の知見もある。店舗の運営ノウハウを手に入れたい彼らと、デジタルを強化したい僕らは補完性が高い。価格帯も違うため、それぞれのブランドの強みもぶつからない。東南アジアではレンズカートがマス層をカバーして、僕らがミドルアッパーラインを攻めることも可能だ」(田中社長)

オンデーズはレンズカート以外にも、多方面にわたってテクノロジー企業とのアライアンスを模索している。今年6月には中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)と共同開発したスマートグラスを発売した。

ファーウェイとのコラボには難色を示す声は少なかったものの、レンズカートとの経営統合については、「インドの会社に身売りするんですか?」という反応も少なからずあったという。

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