日野エンジン不正拡大、まだまだ終わらぬ正念場 20年にわたり続いた体質、国交省にも虚偽報告

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この間、6月には株主総会も開かれたが、その場では「調査委の報告待ち」という説明に終始し、不正拡大の可能性について言及はなかった。仕入先や物流企業といったステークホルダーに対しても同様で、十分な説明をしていない。こうした対応に対し部品メーカーからは「報告書が出たら少しずつ挽回していくと思ってこちらも待っていたのに」といった戸惑いが広がる。

2021年6月に就任したばかりの小木曽社長は、不正行為が行われていた時期に社長を務めていたわけではない。しかし、不正が明らかになった後の対応については責任がある。

国土交通省も怒り心頭だ。既に明らかにされた該当エンジンに対しては型式指定を取り消す行政処分を課していたが、今回の調査報告書をもとに日野から報告を受けた翌日には立ち入り調査を始めた。

基準不適合となったエンジンは大型トラック・バス用と建機用合わせて4機種だ。累計約2.3万台販売しており、国交省はリコールするよう要求している。

2016年の社内調査で不正があったにもかかわらず虚偽の報告をした点ももちろん罰則対象だ。国交省幹部は「あの時にもう少しちゃんと調査をしていれば不正はわかったはずだ」と批判する。

親会社トヨタの責任は

親会社であるトヨタ自動車の責任も重大だ。トヨタは近健太副社長兼CFOを社内取締役として日野に派遣している。2001年のトヨタによる日野の子会社化以降、日野の社長は現在まで6人。前社長の下義生氏を除く5人がトヨタ出身で現社長の小木曽氏を含め技術部門出身が多いが、不正を早期に見つけ出し企業風土にメスを入れることができなかった。

6月の株主総会での小木曽氏への賛成率は66.59%。50.2%の議決権を持つトヨタは賛成したはずだが、それ以外の株主の多くが反対した計算だ。問題拡大の可能性を明らかにしていれば、さらに厳しい結果になっていたことは間違いない。日野やトヨタはこの結果を改めて重く受け止める必要がある。

報告書の発表を受け、年間の国内販売台数のうち主力車種を中心に約53%相当分が出荷停止になり、グローバル販売の全体の約20%にまで及ぶ。今年度の業績の影響は大きく、3月に公表していた対象車種の出荷再開への道のりも遠のいた。調査報告書の公表は日野自動車の不正問題の1つの節目を迎えたが、まだまだ正念場は続く。

井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

自動車業界を担当後、現在は専門店やアパレルなど小売業界を担当。大学時代は写真部に所属。趣味は漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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