「節税」がタブーになる!相続でうまい話は終わり タワマン節税も生前贈与も、もうできない?
そのうえで、国税当局があえて行使したのが、例外規定である。本来、路線価による評価は、ベースとなる財産評価基本通達に基づく(通達評価)。が、同通達の総則6項では、「著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する」と例外扱いし、国税庁の個別の鑑定による再評価につながった(鑑定評価)。
実務上では相続財産のうち、土地や家屋などの不動産は全体の4割を占め、最も多い。遺産分割で親族ともめるのも、相続税の支払いで頭を悩ませるのも、たいてい不動産絡みである。
とくに地価上昇時には不動産節税が利用されやすい。購入価格と時価の乖離が大きくなるので、税負担を大きく軽減できるからだ。
2012年からのアベノミクス効果による株価や地価の上昇時には、タワーマンションによる節税(タワマン節税)が増えたとされる。土地より建物の比率の大きいタワマンは、建物部分の評価に固定資産税評価額を使うため、購入価格の20~30%の水準と、大幅に低くなりやすいからだ。
タワマンは高層ほど高値がつくことから、あえて高層階を買って節税に励むパターンもみられたという。参考までに全国にタワマンは1427棟ある(2021年12月末、東京カンテイ調べ)。
もっとも、相続税の申告において、路線価による評価も債務控除の利用も、一般的な手法だ。仮に、国税当局が今後も例外規定を頻繁に持ち出すようなら、不動産を活用した節税はやりにくくなる。
生前贈与がなくなり、相続も贈与も一緒に?
そして2つ目の逆風は、今後予想される「生前贈与の見直し」だ。
きっかけは2018年末に発表された2019年度税制改正大綱で、「資産移転の時期の選択に中立な制度」を構築する方向で“検討する”と書かれたこと。2020年度にも同様に“検討”と続いた後、2021年度と2022年度で“本格的な検討”へと表現が一段階上がる。「もしかしたら生前贈与がなくなるのでは?」と、税理士かいわいがざわついた。
それを表すのが同大綱で明記された、「相続税と贈与税の一体化」に向け「現行の暦年課税と相続時精算課税を見直す」、との一文だ。
暦年課税(暦年贈与)とは、1月1日から12月31日までの間、年間110万円までなら贈与税が非課税になる、生前贈与の王道である。
一方の相続時精算課税は、累計2500万円まで非課税。こちらのほうが金額は高いが、過去に贈与を受けた財産を相続(死亡)時にはすべて相続財産に加算しなければならず、課税対象になってしまう。贈与された後で評価額が下がっても、相続時には贈与時の価額で課税されるなど、デメリットも多い。ゆえに節税で選ばれるのは多くが暦年課税だ。
さらに、実際には110万円までの非課税枠だけでなく、相続税と贈与税の「税率差」を利用し、税負担を軽減するスキームも見逃せない。
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