イノベーションの成功確率は失敗の数が左右する 失敗への許容度は文化でなく制度設計の問題

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

内田:私が牧さんの本の中で、そうだよなと思ったのが、相関と因果の違いについてです。AとBは何か関係があっても、本当にAがBの原因になっているか。本当の相関なのか、見せかけの相関なのか。それを見極める能力や経験値を高めることは、ビジネスにおいても、ものすごく大事です。

相関と因果の見極めが大事

:そうですね。相関関係と因果関係の区別ができない人は多いと感じています。たとえば、ファミレスで観察していたら、太った人はダイエットコーラを飲んでいたと。だから、ダイエットコーラは人を太らせるというのは、明らかに間違っています。体重とダイエットコーラの間には必ず相関関係があるけれど、それは逆の因果関係で、太っているから、ダイエットコーラを飲んでいるのです。

この事例を話すと、皆さんは笑いますが、ビジネスの世界で「AならばBです」ということの8割以上は、ダイエットコーラは人を太らせるのと変わらないエビデンスレベルなのに、それを信じている。それを区別する方法を知っておくことは重要です。

『イノベーションの競争戦略』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

内田:たしかに因果関係は難しいと感じます。たとえば、ゼミ生がよく「CSR(企業の社会的責任)に取り組んだほうが、業績が良い」というテーマで論文を書こうとして、検証もできるのですが、実は逆で、業績を上げている企業は余裕があって問題意識も高いから、CSRに取り組むのではないかと。どちらが正しいかという論争は今も進行中です。

しかし、私から言わせると、どちらが正しいかは学者としては意味があるかもしれないけれど、ビジネスではどちらでもいい。答えのないものについて結論を出すことよりも、自分で信じることをやって、顧客や市場から評価されるかという結果で判断すべきだと思います。

:内田さんは、学者をひとくくりにしすぎですね(笑)。私がこの本を書いた思いとして、アメリカの学生はそういう思考法を大学時代に学んでいるので、日本の平均的ビジネスパーソンと比べて、明らかに、因果関係と相関関係を分けるのが得意です。日本のビジネスパーソンも知らないと損をするので、学んでいただきたいと思ったのです。

それから、今の若い世代は、こういう思考力を以前よりも大学時代に学ぶようになっているので、上の世代の方はそういう部下をどうマネージするかを考えるヒントにもなります。

(後編につづく)

内田 和成 コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うちだ かずなり / Kazunari Uchida

東京大学工学部卒業。慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。2000年6月から2004年12月までBCG日本代表、2009年12月までシニア・アドバイザーを務める。2006年には「世界の有力コンサルタント25人」(アメリカ『コンサルティング・マガジン』)に選出された。2006年より2022年まで早稲田大学教授。著書に『仮説思考』『論点思考』『右脳思考』(以上、東洋経済新報社)などが多数。

この著者の記事一覧はこちら
牧 兼充 早稲田大学ビジネススクール准教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まき かねたか / Kanetaka Maki

1978年東京都生まれ。2000年慶應義塾大学環境情報学部卒業。02年同大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。15年カリフォルニア大学サンディエゴ校にて博士(経営学)を取得。慶應義塾大学助教・助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師、スタンフォード大学リサーチアソシエイト、政策研究大学院大学助教授などを経て、17年より現職。カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授を兼務するほか、日米の大学で理工・医学分野の人材育成、大学を中心としたエコシステムの創生に携わる。専門は、技術経営、アントレプレナーシップ、イノベーション、科学技術政策など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事