イノベーションの成功確率は失敗の数が左右する 失敗への許容度は文化でなく制度設計の問題
内田:私が牧さんの本の中で、そうだよなと思ったのが、相関と因果の違いについてです。AとBは何か関係があっても、本当にAがBの原因になっているか。本当の相関なのか、見せかけの相関なのか。それを見極める能力や経験値を高めることは、ビジネスにおいても、ものすごく大事です。
相関と因果の見極めが大事
牧:そうですね。相関関係と因果関係の区別ができない人は多いと感じています。たとえば、ファミレスで観察していたら、太った人はダイエットコーラを飲んでいたと。だから、ダイエットコーラは人を太らせるというのは、明らかに間違っています。体重とダイエットコーラの間には必ず相関関係があるけれど、それは逆の因果関係で、太っているから、ダイエットコーラを飲んでいるのです。
この事例を話すと、皆さんは笑いますが、ビジネスの世界で「AならばBです」ということの8割以上は、ダイエットコーラは人を太らせるのと変わらないエビデンスレベルなのに、それを信じている。それを区別する方法を知っておくことは重要です。
内田:たしかに因果関係は難しいと感じます。たとえば、ゼミ生がよく「CSR(企業の社会的責任)に取り組んだほうが、業績が良い」というテーマで論文を書こうとして、検証もできるのですが、実は逆で、業績を上げている企業は余裕があって問題意識も高いから、CSRに取り組むのではないかと。どちらが正しいかという論争は今も進行中です。
しかし、私から言わせると、どちらが正しいかは学者としては意味があるかもしれないけれど、ビジネスではどちらでもいい。答えのないものについて結論を出すことよりも、自分で信じることをやって、顧客や市場から評価されるかという結果で判断すべきだと思います。
牧:内田さんは、学者をひとくくりにしすぎですね(笑)。私がこの本を書いた思いとして、アメリカの学生はそういう思考法を大学時代に学んでいるので、日本の平均的ビジネスパーソンと比べて、明らかに、因果関係と相関関係を分けるのが得意です。日本のビジネスパーソンも知らないと損をするので、学んでいただきたいと思ったのです。
それから、今の若い世代は、こういう思考力を以前よりも大学時代に学ぶようになっているので、上の世代の方はそういう部下をどうマネージするかを考えるヒントにもなります。
(後編につづく)
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