イノベーションの成功確率は失敗の数が左右する 失敗への許容度は文化でなく制度設計の問題
アカデミックの研究は本当に役立つのか
牧:アメリカのビジネススクールでは、イノベーションを教える人のバックグラウンドがこの10年で変わってきました。昔は技術経営や製品開発の研究者でしたが、今は行動経済学、行動科学の研究者が増えているのです。これは、良いアイデアを思いついても、ユーザーに使ってもらわないと意味がないことに、教育現場でも気づいているからです。
内田:私がWBSの教員になって気づいたのは、学者は「意味があることを示す」有意性を重視することです。ある説明変数で事象の6~7割を説明できても、統計学的な有意性の判定基準であるP値が10%を超えてしまえば、論文として高く評価されないし、おそらく発表もできない。
一方、ビジネスでは「予測や説明の当てはまりやすさ」を示す決定係数のほうが圧倒的に大事です。10回に1回間違えても9回合うなら、そのほうがよい。統計よりも、実際にお客さんに買ってもらってなんぼ。その肌感覚を持って論文に落とせるかが大事。だから、あえて言うと、結論ありき、感覚ありきでもよいと思っています。


















