人生最大と思える瞬間まで、数分が迫っていた。スタジオに足を踏み入れると、あたり一面にカメラが見えた。私は、オンエアまでのカウントダウンを示す数字を見守った。
あと数秒もすれば生放送が始まって、全国の1億世帯以上に放送されるだろう。口から心臓が飛び出しそうだった。
あなたはどうかしている、大きな過ちを犯していると言った専門家たちの声を、振り払わなければならなかった。
会社が倒産するかもしれないという可能性も、忘れなければならなかった。
それから、全国放送に映る洋服が少しきつい気がするといった比較的ささいなことも、手放す必要があった。
それらを振り払い、「憧れ」の新しい定義を目にする権利がある、全国のすべての女性たちのために戦うことに集中した。
私のような女性たちに伝えたいこと
私のような女性たちは、まだ足りないと言われ続けてきた。まだ痩せていない、まだかわいくない、と。考えてみれば、ほぼすべての女性がそうだ。
私のような女性たちは、この手の言葉をイヤというほど思い返しては信じ込み、自分の頭の中に牢獄を作り出している。あの人のような見た目だったら幸せになれるのに、と。
私のような女性たちは、そんなバカげた錯覚を抱きながら、毎日の生活であまりにも多くのエネルギーをムダにしてきた。
でも私は、手にしたチャンスをムダにするつもりはなかった。
オンエアを示す赤いライトが点灯し、生放送のカメラが私の顔を大きく映し出すと、10分間の時計が動き出した。
司会者が第一声を発しようと口を開けた時、私の目の前で、持ち時間が点滅を始めるのが見えた。9:59、9:58、9:57……
生放送だ。さあ、行くわよ……。
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