何からスタートするのか、どのような順番で展開するかは、それぞれの会社の状況によって柔軟に変えればいいが、「カルチャー変革」という一大プロジェクトを成功に導くために必要な条件は、次の4つに集約される。
経営者は改革を急いだり、大きな変化を求めたりしがちだが、組織風土を一気に変えることはできない。ここで何より大事なのは、「足元からの改革」を実践し、初期段階で「アーリー・スモール・サクセス」(ESS:初期段階での小さな成功体験)を生み出すことである。
先述した住宅メーカーのある支店では、はじめ、メンバーは活気に乏しく、「達成できない数字ばかり押し付けてくる」「リソースが足りない」「本社のサポートがない」といった「他責」が充満していた。
そんな状況で、いきなり「風土改革を進めろ」などと発破をかけられても、何から手をつければいいのかさっぱりわからない。そこで私は、「どんな小さなことでもいいので、いままで取り組めていなかった現場の課題をみんなで解決することから始めよう」と助言した。
すると、支店内の美化や訪れる子連れ客への環境整備など、「これなら自分たちでもできる」と矢継ぎ早に「ESS」に取り組みはじめた。
日ごろ感じていた問題点をみんなで議論し、足元の変化を自分たちで生み出していった。すると、いままで見えていなかったさまざまな「ファクト」(事実)が見えてきた。
現場の声という「ファクト」を自分たちの足で拾い集め、現実を真正面から見ることによって、「何をどう変えればいいのか」の変革シナリオが見えてきたのである。
「健全なカルチャー」は「足元の課題の解決」から
プロジェクトの初期段階で難易度の高い壮大な課題に取り組んだところで、頓挫することが多い。
それよりも足元の課題に着目し、みんなで汗をかき、解決することによって、「自分たちが動けば変えられる」という自信が生まれ、プロジェクトにも勢いが加わる。それが会社全体に広がることによって、「良質なカルチャー」は徐々に醸成されていく。
組織の規模にもよるが、「良質なカルチャー」が醸成され、組織に根付くには最低でも10年はかかる。
だからこそ「良質なカルチャー」は、そう簡単には真似のできない最強の模倣困難性となるのである。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら