組織を強くしたい「勘違いリーダー」よくある4NG トップの「意志と覚悟」は重要だが…御社はOK?

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何からスタートするのか、どのような順番で展開するかは、それぞれの会社の状況によって柔軟に変えればいいが、「カルチャー変革」という一大プロジェクトを成功に導くために必要な条件は、次の4つに集約される。

出所:遠藤功『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える』

経営者は改革を急いだり、大きな変化を求めたりしがちだが、組織風土を一気に変えることはできない。ここで何より大事なのは、「足元からの改革」を実践し、初期段階で「アーリー・スモール・サクセス」(ESS:初期段階での小さな成功体験)を生み出すことである。

先述した住宅メーカーのある支店では、はじめ、メンバーは活気に乏しく、「達成できない数字ばかり押し付けてくる」「リソースが足りない」「本社のサポートがない」といった「他責」が充満していた。

そんな状況で、いきなり「風土改革を進めろ」などと発破をかけられても、何から手をつければいいのかさっぱりわからない。そこで私は、「どんな小さなことでもいいので、いままで取り組めていなかった現場の課題をみんなで解決することから始めよう」と助言した。

すると、支店内の美化や訪れる子連れ客への環境整備など、「これなら自分たちでもできる」と矢継ぎ早に「ESS」に取り組みはじめた。

日ごろ感じていた問題点をみんなで議論し、足元の変化を自分たちで生み出していった。すると、いままで見えていなかったさまざまな「ファクト」(事実)が見えてきた。

現場の声という「ファクト」を自分たちの足で拾い集め、現実を真正面から見ることによって、「何をどう変えればいいのか」の変革シナリオが見えてきたのである。

「健全なカルチャー」は「足元の課題の解決」から

プロジェクトの初期段階で難易度の高い壮大な課題に取り組んだところで、頓挫することが多い。

それよりも足元の課題に着目し、みんなで汗をかき、解決することによって、「自分たちが動けば変えられる」という自信が生まれ、プロジェクトにも勢いが加わる。それが会社全体に広がることによって、「良質なカルチャー」は徐々に醸成されていく

組織の規模にもよるが、「良質なカルチャー」が醸成され、組織に根付くには最低でも10年はかかる

だからこそ「良質なカルチャー」は、そう簡単には真似のできない最強の模倣困難性となるのである。

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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