ここまで述べてきたように、経営トップは、腰を据えて取り組み、現場に当事者意識が徐々に芽生えるのを辛抱強く見守る必要がある。
それと同時に、リアルでビビッドな取り組みを、絶え間なく仕掛けていくことが欠かせない。
「カルチャー改革」にじっくり取り組むといっても、全社に対する情報発信は継続的に行わなければならない。
経営トップが明確な意思表示をするだけでなく、「草の根運動」での取り組みの様子や成果を「見える化」し、啓蒙していく努力が不可欠である。
近年では、SNSなどを活用し、現場での取り組みを動画で配信したり、現場の実践者が直接語りかけたりすることもできる。
私の関わった給食事業などを手がける会社では、現場一つひとつの「質」を高めるために、「現場力エバンジェリスト」の養成を打ち出した。
理論とスキルを学び、「現場力の伝道師」として、さまざまな研修を用意したり、現場ごとに改善のために適切なアドバイスを提供したりしながら、地に足の付いたサポートを展開していった。
このように、取り組みの様子や成果を「見える化」によって共有し、徐々に当事者意識を芽生えさせることが、その後の展開を加速させていく。
無味乾燥な言葉をいくら語ったところで、「カルチャー変革」の実像は伝わらない。現場感溢れるリアルな情報発信、コミュニケーションができるかどうかが、「カルチャー変革」の肝である。
属人的ではなく組織的な「仕組み化」を
私が「現場からのカルチャー改革」に携わったある会社では、現場での業務が標準化・マニュアル化されておらず、できる人に業務が集中していた。その結果、能力の高い人は残業も多く、満足に休みもとれず、退職する人も多い、という悪循環に陥っていた。
この状況を打破するべく、とりわけ仕事の「標準化」、つまり「誰にでもできる仕事」を増やしていくことを重視して、「カルチャー改革」を行った。
変化の「芽」を伸ばし、育てるためには、どこかの時点で「仕組み化」が必要である。仕組みができることによって、変革を加速させ、定着させることが容易になる。
先述した「現場力エバンジェリスト」はひとつの仕組みである。「エバンジェリスト」という新たな役割を設けることによって、「属人的」ではなく「組織的な動き」を加速することができる。
初代の「エバンジェリスト」たちはいずれ現場に戻ったり、ほかの部署で活躍したりすることになるが、また新たな「エバンジェリスト」が任命され、現場力の強化、浸透に努めることになる。
時が経てば、「エバンジェリスト」経験者が着実に増え、そうした人たちが中心となって「現場力というカルチャー」がより強固なものとなる。
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