第2にプーチン大統領が強く抱くのは、アメリカとNATO諸国がロシアの安全を脅かしているという観念である。
プーチン大統領が国家安全保障会議での冒頭発言で、アメリカやNATO諸国が「ウクライナを用いてロシアと対峙することは深刻な脅威となる」と述べている。
仮にロシアと領土を一体化しなければならないウクライナがNATOに加盟することとなれば、ロシアはNATOとの軍事衝突を余儀なくされる。これこそがアメリカが「ロシアの解体を目指している」(パトルシェフ安全保障会議書記)証左として認識されるのである。
このようなウクライナの西側傾斜やEU・NATO加盟の動きが本格化する前に、ロシアは行動しなければならない、と考えた可能性が高い。
「短期間で目標達成できるという自信」も
第3は、こうしたアメリカの影響を強く受けたウクライナの指導層が、ロシア系住民を抑圧しているため、ロシアは国家として彼らを保護しなければならないと考えていることである。
プーチン大統領の認識では、ドンバス地方におけるロシア系住民に対して、ウクライナ軍が執拗な攻撃を加えて多くの住民が死傷し、それは虐待やジェノサイドといった概念を当てはめるにふさわしい状況と捉えられている。それが「ウクライナをネオナチ勢力から解放する」という主張に結びつく。
第4は、ウクライナ侵攻が短期間で成功し、ロシアの被る損害は許容可能なものとなる、という自信である。その背景には、ウクライナ軍の能力やウクライナ国民の抵抗の意志に対する過小評価があったに違いない。
また、アメリカやNATO諸国は直接軍事介入できないという確信も、ウクライナ侵攻を決断した理由となったことが考えられる。欧米諸国からの経済制裁も織り込み済みだったろうが、これほどの規模で制裁が展開されたことは予想外だったのではないだろうか。
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