英国教授が「世界の停滞は良いこと」と言う深い訳 成長が減速した先に待ち受ける安定した世界

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いまのものの見方や考え方は、将来も技術変革は急速に進む、経済成長は永遠に続くということが大前提になっている。経済でも、政治でも、それ以外のことでもそうだ。スローダウンが進んでいる現実と向き合うには、変革やイノベーション、発見は大きな恩恵をもたらすとする考え方を根本から変える必要がある。

技術革命が絶えず生まれると期待するのはやめるべきなのだが、それを受け入れられるようになるのだろうか。そうならない可能性があるとしたら、それ自体が恐ろしいことである。

大加速時代の終焉

いま、あなたは猛スピードで走る列車の中で暮らしていて、そこに突然ブレーキがかかったような感じがしたと想像してみよう。次に何が起きるのか、きっと心配になるだろう。

今度は、あなただけでなく、あなたが知っているすべての人、そしてその親、祖父母、孫、ひ孫まで、思い出せるかぎりの人たちが全員、その同じ高速列車に乗って暮らしていて、列車はほとんどずっと加速し続けていると想像してみてほしい。あなたにとっては、猛スピードで疾走している状態が当たり前で居心地がいいが、これからスローダウンを肌で感じ始めることになる。これまでに経験したことのない、恐怖を覚える感覚だ。

ところが、列車はいまも止まることなく走っているので、まわりにいる人たちは、まだ加速は続く、つまり変化のペースは増すと口々に話している。しかし現実には、列車がこれ以上スピードを上げることはもうない。何かが変わっている。車窓から見える景色の流れは緩やかになっている。あらゆることがスローダウンしている。1つの時代が終わろうとしているのだ。

最近の世代で進んだ「大加速化」は、私たちが暮らす文化をつくりだした。そしてそこから、進歩に対する独特の考え方が生まれた。ここでいう「私たち」とは、いま地球上で暮らしている高齢者の大多数のことだ。それは、健康状態や住居、職場の環境が親や祖父母の世代よりもおおむねよくなった人たちであり、教育を受ける機会が広がった人たちであり、生きている間に絶対的貧困も困窮も減少した人たちである。

そして、子どもの世代はいまの自分たちよりずっといい暮らしをするようにはならないと考えるようになっている人たち、そう、スローダウンという新しい流れを感じ取っている人たちである。

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