収束見えぬウクライナ侵攻で存在感増す国の正体 ロシアと西側諸国の対立は経済消耗戦の様相

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エネルギー価格高騰とインフレに襲われるヨーロッパでは、6月にウクライナのキーウを訪問し、ウクライナの欧州連合(EU)加盟支持を表明したフランス、ドイツ、イタリアの各首脳、さらにはイギリスの首脳も苦境に立たされている。

6月の下院選挙で与党が過半数割れしたフランスのマクロン大統領は、早速、議会で衛生法案の修正を余儀なくされ、生活苦境に追い込まれる国民の不満の矢がマクロン氏に向けられている。

天然ガスをロシアに依存しているドイツは、ロシアが完全に供給を停止することに戦々恐々としている。足元の社民党や緑の党が1970年代後半からこだわった原発ゼロを年内に実現したいのに対して、与党の一角をなす自由民主党(FDP)が、原発停止延期を強く主張し、「今の事態はイデオロギーにこだわっているときではない」と批判し、インフレで苦境に立たされるショルツ首相は対応に苦慮している。

イタリアはウクライナ危機による物価高騰対策をめぐる信任投票で、五つ星運動がボイコットし、ドラギ首相は辞表を提出(大統領は拒否)。総選挙の前倒しの可能性も出ており、イタリア政界は混乱に陥っている。

イギリスは、ジョンソン首相の不祥事で閣僚が次々に離反し、辞任に追い込まれた。

つまり、ウクライナ詣で後のフランス、ドイツ、イタリア、イギリスの首脳は、対ロシア制裁の消耗戦でリーダーシップを発揮する状況にはない。

ヨーロッパにはない独自外交を展開するトルコ

対ロシア経済消耗戦でヨーロッパ同様、苦戦するトルコのエルドアン大統領だが、ヨーロッパにはない独自外交を展開し、危機をチャンスに変えようとしている。

ウクライナにロシアが侵攻して以来、その仲介役として名乗りを上げたエルドアン氏率いるトルコは、北大西洋条約機構(NATO)の一員であり、最近はアフリカの食料問題で国連と連携し、ロシアのプーチン大統領を自国に迎え、直接協議を行っている。

さらにトルコは東西文明の交差する西側と中東を結びつける地政学的優位性を利用。近年はイスラム色を強めながら、シリア紛争に関与し、そこではロシアとの関係で独自の行動をとっている。また、黒海を挟んでウクライナ、ロシアと向き合い、カフカス地方にも隣接するトルコは、交易だけでなく、エネルギー資源の供給でも西側に通じるカギを握っている。

2019年暮れには、カスピ海に面したアゼルバイジャンの油田とイタリアを結び、トルコを横断する天然ガスパイプライン(TANAP)を開通させた。EUがロシアへのエネルギー依存を断ち切る方向にある中、トルコの存在感は増す一方だ。

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