日本が大量輸入する「木質ペレット」に重大な懸念 生産地のアメリカ南部で増える健康被害の声

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2025年まで、エンビバの契約相手の約半分が日本の企業になる。エンビバのIR資料には、住友商事、三菱商事、丸紅など大手企業の社名が並ぶ。企業に供給する木質ペレット量は少なくとも350万トンになる。それに加えて、電源開発に最大500万トンのペレットを供給する可能性を探るとの覚書も結んだ。

「一部批判があることは認識している」

木質ペレット工場による環境汚染や健康被害の疑いの認識や対応についてエンビバやドラックス2社とも取引がある住友商事は「一部批判が存在することは認識している」と認める。木質バイオマスに対する取り組みを紹介し、「今後も実態把握に努め、必要に応じ改善に努めていく」としている。

エンビバから木質ペレットを調達している三菱商事も「(批判が出ているような)報道があることは認識している」が、第三者認証やサプライヤーに対する調査などで「工場の運用は現地の環境規制を満たしていることを確認している」という。

一方、電源開発は「(エンビバを批判する現地の)報道については承知している」という。「今年度から共同検討を開始しており、持続可能性や環境への影響についてもその中で把握をしていきたい」。実際の調達になれば「現地確認なども含めて対応する」。

需要が増える中で、エンビバは2027年までにアメリカのミシシッピ州やアラバマ州に6つの新しいペレット工場を開設する予定で、年間生産量を620万トンから1300万トンまで増やす計画だ。

ドラックスも、「ヨーロッパとアジアの需要に応えるために」現在の460万トンの年間生産量から、2030年まで800万トンに増やす予定(アメリカ外の工場を含む)としている。

ミシシッピ州ストーン郡もエンビバの工場設立が進んでいる地域の1つだ。

2022年5月のある日曜日、教会で礼拝が終わった後、計画中のペレット工場に関するコミュニティミーティングが開催された。「建設地の変更はまだ可能なので、少なくとも人が暮らしていない場所に置かれるように求めよう」という妥協的な提案も住民から上がった。一方、ミーティングに参加したNAACP環境・気候正義委員会長カサリン・エグランダ氏は、エンビバが約束する「地域活性化」を強く拒否した。

「生計のために死ななくてもいいはず。(ペレット工場をこの郡に迎えたら)家族をサポートするために仕事していると同時に、家族の墓を掘っていることになる」(エグランダ氏)

アナリス・ガイズバート フリーランス記者

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Annelise Giseburt

アメリカ、シアトル生まれ。大学で日本語や英文学が専攻。2016年に来日、現在広島に在住。翻訳を独学し、2018年に翻訳の仕事を開始。フリーランスライターとして寄稿した新聞やサイトは「The Progressive」「GaijinPot」「GetHiroshima」など。

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