日本が大量輸入する「木質ペレット」に重大な懸念 生産地のアメリカ南部で増える健康被害の声

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コーシーレン氏が住むエイメット郡は人口1万2600人で、黒人比率は40%、貧困率は約20%と、どちらもも州平均より少し高いが、ノースカロライナ州ほどのギャップがない。

コーシーレン氏は言う。「(エイメット郡工場がある)グラスター町の人々は高度な教育を受けているわけではない。住民が理解できないだろうと考え、この町がペレット工場の場所として選ばれたのではないか。利用されたような感じがする」。エイメット郡の大学卒業率は12%で、州平均(23%)を下回る。

ホームページなどで、エンビバやドラックスは地域への貢献をアピールしている。エンビバのプレスリリースには、「歴史的黒人大学への寄付」「郡レベルのNAACP団体から賞を受賞した」といった見出しが定期的に出てくる。ドラックスは、教育支援に力を入れているように見せている。

エンビバ工場の近くに住んでいるジョイナー氏は、こうした貢献について、「これはパンくずの残りかすのようなものだ。パンくずにもなっていない」と一笑に付す。ノーサンプトン工場が地域の学校に数千ドル(数十万円)程度の寄付を時々する一方、大気汚染量を増加するノーサンプトン工場の拡張に数千万ドル(数十億円)を投資するという。

雇用拡大の機会に飛びついた

アメリカ南部の環境NGO「ドッグウッド・アライアンス」のエルニコ・ブラウン氏も、ペレット工場が「戦略的に」貧困率の高い町に置かれていると考えている。ブラウン氏の仕事は、ペレット工場による影響を受けている住民のネットワークを作って一緒に解決方法を探すことだ。貧困コミュニティの雇用問題に取り組んだ経験もある。

ブラウン氏によると、多くの場合は市長など町当局が町の経済を活性化させたいため、雇用拡大の可能性があるという“うまみ”を考慮し、ペレット工場建設計画に反対しないのだという。「何もない町に、みんな希望を探している。仕事は希望だ」(ブラウン氏)。

しかし、学歴がないと現地の人々にはペレット工場で単純作業の仕事しかない。直接雇用ではなく派遣雇用という形になって、正社員より給料が低いという話がブラウン氏に寄せられている。

エンビバは工場立地の選び方や、地域との関係性についてこう説明する。

「低品質木材との近接性、労働力、輸送ロジスティックス、支援的なコミュニティなど複数のビジネス要因で施設の立地を選ぶ。多くの場合、州や郡の経済開発局や地元のリーダーから直接誘致され、産業の海外移転や閉鎖によって低迷している地域に成長しているビジネス、雇用、投資をもたらしている。地域に経済的、環境的にプラスな影響を与えていることを誇りに思っている」

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