日本が大量輸入する「木質ペレット」に重大な懸念 生産地のアメリカ南部で増える健康被害の声

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エンビバも罰金を何回か支払っている。ノースカロライナ州サンプソン郡の工場は、2017年以降VOC排出量などの許可証違反で罰金を科させれている。また、同州リッチモンド郡の工場も2021年に、大気汚染対策装備の温度規制違反で約1万ドル(約120万円)の罰金を支払っている。こうした違反について、エンビバは「当局と緊密に連携し、過去に発生した行政的あるいは軽微な許可逸脱に対処し、解決してきた」としている。

SELCを含む環境NGOらが、大気汚染対策を求めてエンビバに対する訴訟を起こしたこともある。訴訟はエンビバが大気汚染を95%減らす装備をリッチモンド郡の工場に設置するという結果の和解で終わった。

上述のヒラカー弁護士によると、エンビバのノースカロライナ州アホスキ町にある工場から出ている粉塵に関して、住民が苦情を言ったことにより、州当局はこの工場に対して粉塵対策計画の実施を求めた。対策を実施しても住民が苦情を言い続けて、計画が少なくても1回更新された。

「複数のエンビバ工場で近隣住民が粉塵に関する苦情を言い続けているにもかかわらず、ノースカロライナ州の4つの工場の中で、粉塵対策計画があるのはアホスキ工場だけだ」(ヒラカー弁護士)

エンビバのアホスキ工場は24時間操業している。木質ペレット産業は、木質ペレットを購入する側から、そして、アメリカの国・州・地域レベルで複数の補助金で支えられている。補助金がないとビジネスにならないのではないかと、アメリカの環境NGOが指摘している(写真:筆者撮影)

工場を設置する地域の「特徴」

ペレット工場が置かれている町にはある共通点がある。貧困率が高く、大学卒業率が低く、なおかつ黒人住民の割合が高い田舎の町だ。

2021年10月、黒人に対する人種差別に取り組む団体「全米黒人地位向上協会(NAACP)」の理事会は、木質ペレットの生産は有害だとして、アメリカ環境保護庁(EPA)やアメリカ議会、ジョー・バイデン大統領に対して早急に木質ペレット工場の停止を求める声明を出した。同声明でも工場の多くは、貧困率の高い、人種マイノリティ住民が多い町に置かれがちだと指摘している。

例えば、ジョイナー氏が住むノーサンプトン郡の人口は約1万7100人だが、このうち約60%は黒人で(ノースカロライナ州の平均は22%)、5人に1人が貧困で暮らしている(州は8人に1人)。CNNの分析によると、エンビバのペレット工場の9つ(当時)のうち、8つは州平均より黒人割合や、貧困率が高い地域に置かれている。

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