日本が大量輸入する「木質ペレット」に重大な懸念 生産地のアメリカ南部で増える健康被害の声
住民の健康問題とペレット工場による大気汚染の因果関係を調べる調査はまだ、どこでも行われていない。
しかし、近隣住民の健康に悪影響を与える大気汚染許可証に違反する操業を行ったペレット工場が複数ある。コーシーレン氏らが健康問題の原因ではないかと疑っているドラックスのエイメット工場はその1つだ。
エイメット工場は2016年から揮発性有機化合物(VOC)の排出量が許可証を3倍ほど超えていたことが判明し、2020年に州の当局による罰金を受け、VOC対策装置の設置も求められた。当局が動いたきっかけは定期的な検査ではなく、NGOが独自に汚染を検査し当局に報告したことだった。
罰金は250万ドル(約3億円)と、ペレット工場に対する罰金としては最大だと言われている。ただ、アメリカの環境NGO「ドッグウッド・アライアンス」によると、ドラックスは2019年で10億ドル弱(約1300億円)の補助金をイギリス政府から受けている。この罰金は、1日あたりの補助金程度だった。
なおこのとき、企業側も、当局側も、許可証違反の大気汚染や罰金について住民に知らせなかった。ペレット工場問題に取り組んでいるNGOの職員がエイメット郡にやってきたことで、住民はコミュニティが汚染されてきたことをようやく知ったという。
ドラックスの対応にも不満の声
罰金とともに当局により求められたVOCや、有害大気汚染物を大気から除去する装置を設置しても、コーシーレン氏の知り合いや親戚の健康問題に改善は見られず、同氏はこの対応に納得していない。
「知りたいのは、罰金のお金はどこに行ったのか。家にエアコンや浄化装置の設置や、電気を使う酸素タンクを利用している人たちの電気代を安くすればいいのに、そのお金が近隣住民のためにいかされていない」と、コーシーレン氏は憤る。
住民への対応や許可証違反に関する質問に対し、ドラックスの回答はこれだけにとどまった。「従業員や住民の安全を最優先とし、環境に対する責任を真剣に受け止めている。当社のすべてのペレット工場は、環境に関する許可証を遵守している」。
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