欧米景気後退で日本人がさらに「貧しく」なる根拠 ほかの国より世界情勢の影響を受けやすい理由

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日本は小幅な成長を遂げたものの、今や人口の3分の1近くを占める高齢者の可処分所得の中央値は11%もの大幅な暴落を記録した。現役世代については可処分所得の中央値が2%落ち込んだが、これは主に実質賃金上昇の停滞によるものである。

この結果、2種類の不安定性が生じた。

第一は、日本が、消費を促進し、慢性的な不況を回避するために、数十年にわたる巨額の財政赤字と、ゼロに近い低金利に頼ってきたことである。第二は、こうした財政・金融政策を実施してもなお、経済は経済ショックに対する耐性を失ってきた。一言で言えば、家計所得の低迷がGDPにブーメランのように返ってきて、日本の成長率を下げているのである。その詳細を見てみよう。

政府予算によって賄われる個人消費

「失われた20年」の間に民間部門の所得が伸び悩んだため、政府からの現金給付に対する家計支出の依存度はますます大きくなった。

1980〜1992年当時、家計所得の増加分の85%は、賃金、自営業収入、家賃、配当、利息、個人年金、保険年金など民間部門の所得の増加によるものだった。社会保障やその他の社会扶助など、政府による現金給付の増加によるものは、わずか15%であった。

その後、大きな反転があった。1992年以降、民間部門における所得向上は蝸牛の歩みにまで減速した。30年近くもの間、達成された伸び率はわずか4%、実質(物価調整後)年率で言えば0.1%しかなかったのである。

一方、大幅な財政赤字で賄われた政府の現金給付は、2倍以上に増加した。その結果、家計所得の伸びの4分の3近く(72%)が政府の現金収入によるものとなった。民間所得の増加が寄与したのは28%にすぎない。政府の赤字支出がなければ、個人消費ははるかに弱く、したがって、GDPもさらに悪化していただろう。

したがって、2008〜2009年の不況以来、社会扶助の伸びが著しく減速したことは、将来の重要な前兆である。1992〜2008年に政府の現金給付は年間3.2%増加したが、2008年以降は1.7%と増加ペースが半減している。この減速が続くか、さらに悪化すれば、消費を適度なペースで伸ばし続けるには、民間所得の大幅な回復が必要となる。

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