欧米景気後退で日本人がさらに「貧しく」なる根拠 ほかの国より世界情勢の影響を受けやすい理由

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円安が続くかどうか、またいくらまで進むかは誰にもはっきりとはわからないが、年末には1ドル140〜150円になると見るトレーダーは増えている(本稿執筆時点では139円台)。そうなれば、消費者の購買力の足をさらに引っ張ることになる。

アベノミクスから脱却できなそうな日本

読者は、ここでの主張が、岸田文雄首相がロンドン演説で宣言した内容と似ていることにお気づきだろう。首相は「これまで賃金の伸びは限られてきた。それが消費を抑制し、ひいては経済全体の成長を妨げている。日本は生産性を高め、生産性とともに賃金が上昇するようにしなければならない」と述べた。

さらに、岸田首相はアベノミクスの特徴である「トリクルダウン理論の失敗を覆す」ことを誓った(故・安倍晋三元首相を名指しで批判することはなかったが)。

安倍元首相は、円安が企業収益を上げ、インフレ率を上げると主張した。その結果、企業は賃金を上げ、新規設備への投資を拡大し、消費とGDPを向上させることになる。

しかし、現実には、企業収益は急増したものの、そこからトリクルダウンした(滴り落ちた)のは微々たるものだった。それどころか、所得が下位所得層から上位所得層に転移するトリクルアップが起きた。

残念ながら、岸田首相は、正しい診断を下しながら必要な薬を出さない医者のようだ。代わりに彼が提供するのは、美辞麗句を並べたプラシーボ(偽薬)だけだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。目下、日本の中小企業の生産性向上に関する書籍を執筆中。

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