原油価格上昇は長期的な成長阻害要因、FRBは当面、高失業率を重視《アフリカ・中東政情不安の影響/専門家に聞く》
--オバマ政権のこれまでの対応をどう見るか。
米政権は多くの対立する懸念を調整しようとしている。米国の批評家の多くは、米政権はもっと明確に民主化運動と政権交代を支援するべきと要求している。しかし、どの大統領も現状維持による安定に重きを置く傾向がある。そのため、オバマ政権も注意深く民主化運動を後押ししており、政府の側には抑制を求めている。
初代ブッシュ政権は東欧、旧ソ連の民主化の産婆役として評判が高いが、同政権はしばしば安定を重視した。ウクライナがソ連にとどまるほうをよしとし、バルト三国が西側にあまりに早急に入ることをよしとしなかった。
大統領というのは、こうしたバランスを考えた行動をとるものだ。
--実際のところ、米国の影響力はどの程度か。
非常に小さいが、中東以外の国々の中では依然として最大かもしれない。中東域内では、他国の影響力は極めて限られている。
--中東が反米の方向に向かう可能性は。
どの程度かはハッキリ言えない。しかし、過去数年、中東での選挙のたびに親米度の低い政府ができている。ハマスがパレスチナ自治政府の選挙で勝利し、イラクでは政府がイラン寄りになりつつある。レバノンでは、ヒズボラが首相選任で主要な役割を果たした。中東では、選挙で国民の人気が反映されやすくなると、より反米感情の強いグループが発言力を握る傾向にある。ただ、これはあくまで傾向であり、絶対視すべきではない。
イスラエルとエジプトの新政府の関係も不透明だ。中東では軍部が依然強い影響力を持っており、安全保障など長期的関係の根本部分は変わらないだろう。しかし、エジプト政府が今後もガザ地区との境界の警備を強化し続けるのかどうか。
多くのエジプト国民はガザに入って支援したいと考えており、パレスチナへの武器の持ち込みすら考えている。ムバラク政権ではこうしたことは許されなかった。今後は両国の関係に大きな変化が起こる可能性は否定できない。
■原油高騰の影響続けば、米国の金融引き締めは先送りへ
--原油価格への影響はどうか。
市場には供給不安がある。現状、実際の供給途絶は大規模ではないが、マーケットの焦点は「リビア後」へと移っている。