10歳の子供が「手紙1枚」で大儲けした秀逸な方法 「ケインとアベル」に学ぶマーケティング思考

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加えて、実際に試したことがあるのが、巻物風DMです。時代劇に出てくるようなくるくる巻いてある、あれです。実現しなかったものの、アイデアで出たのが「河原の石」にメッセージを書くこと。石も定型外郵便で届くのですよ。ミカンの汁で書いて、あぶり出しでメッセージを読んでもらうという案もありました。いい悪いは別にして、いずれもとにかく受け手の気持ちを揺さぶり、目立ち、なおかつ費用の負担は小さいアイデアだと思います。またオーソドックスですが、あえて手書きDMに立ち返るのもいいと思います。

相手の心に響く、手書きの一筆作戦

例えば、顧客にプレゼンテーションする際、配布する資料の表紙の隅に、「今日はよろしくお願いします」など、何か手書きのメッセージを一筆添えるだけでも、随分と印象は良いものです。字の上手い、下手は関係ない。手書きの文字には気持ちが乗ります。

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最近送られてきた郵便物の中で印象的なものがありました。差出人は、先日、私が講演をしたときの参加者のおひとりです。とにかく、宛名の書き方が特徴的でした。筆ペンで、封書の前衛的な書道家が筆を走らせたかのように、全面を埋め尽くす大きな文字で書かれていて、それはもはや文字というより一種のデザインでした。

差出人の名前が珍しかったことも相まって、強烈なインパクトがありました。読み終わった後も、保管しているくらいですから。こうなると、もはや手紙の内容は二の次。「この人はいったい、何をしている人なのだろう」と興味が湧いてきます。

この先、この方とビジネスでつながるかどうかはわかりませんが、100人ほどの講演会参加者の中で、この方の存在は深く私の記憶に刻まれました。もし今、このタイミングでフォローの電話がかかってきたら、間違いなく、「あっ、あの手紙をくださった方ですね。先日はありがとうございました」といったように会話が弾むと思います。

このように、紹介したDMでの工夫は、どれも特別変わったものではありません。中には誰でも考えつきそうなものもありますが、実際にやる人は少ないのではないでしょうか。

相手の印象に残るために必要なのは、必ずしもお金を使うことではなく、ちょっとしたアイデアと行動力なのです。

西村 誠司 エクスコムグローバル代表取締役社長

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にしむら・せいじ / Seiji Nishimura

エクスコムグローバル株式会社代表取締役社長。1970年愛知県生まれ。名古屋市立大学卒業。93年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。95年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立、社長に就任。97年海外用レンタル携帯電話事業をスタート。2012年海外用Wi-Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」ブランドの提供を開始。19年メディカル支援事業をスタートし「にしたんクリニック」の立ち上げを支援。

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