「奨学金490万円」29歳男性が感じた海外との格差 ドイツ人留学生の「俺の国は学費タダ」に衝撃

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「私が就活をしていた頃は、例年よりも解禁日が遅れることが留学前から判明していたんですね。留学を決めた背景には、そのこともありました。留学中も就活は始めていて、ネットでESを出していたりしました。

帰国後に、面接を受けるんですよ。日本でモヤモヤしていた時にTOEIC講座を主催していたキャリアセンターの職員の方と仲良くなっていたので、その人にもいろいろと相談していました」

奨学金返済が「人生の足枷」に

真面目なのかチャラついているのか、やや判断に困る話しぶりだが、その後、吉田さんは大学で学んだ理系技術(留学先でも専門は変わらず)を活かしたコンサル会社に新卒で就職。現在も勤務中だ。

「返済額は毎月2万2000円です。社会人1年目は実家から通って、浮いた家賃分を払う感覚で毎月6万6000円を繰り上げて返していました。払い始めて思ったのは『実際、借り過ぎたな』ということ。高校生の時は母親と『ギリギリで借りるより、ちょっと余るぐらい借りよう』という話をしていましたが、490万円という金額の大きさは全然理解できていなかったですよね……。

だから、今でもボーナスが入ると、繰り上げ返済を続けています。やっぱり、早く完済したいというのもあります。だって、繰り上げ返済しなければ、返し終わるの41歳ですからね」

やはり、社会人として働いていると、奨学金の存在は大きくなる。返すべき存在があることで、吉田さんは「人生の中で取れる選択肢」が変わった。

「奨学金を借りたことでここまで来られたし、借りていなかったら、大学進学はできずに、今よりも収入が低いと思います。でも一方で、奨学金は僕にとって足枷のような存在でもあって、何をするにも『奨学金を完済してから』と思ってしまうんです。

ひとり暮らししようと思っても『家賃がかかるから』という理由で、社会人になってからも4年間は実家で暮らしていましたし、キャリアアップのために海外の大学院への留学を考えて、断念したこともあります。

例えば私の場合、専門の領域をより深く学べる欧米の大学院に留学するとして、2年間で平気で600万円程度はかかってしまう。もし奨学金の存在がなければ、思い切って行けたかもしれないのですが……」

ちなみに、吉田さんは奨学金返済の一方でコツコツ貯金を続けており、今では600万円近くあるという。同世代の中ではかなり貯金しているほうにも思えるが、奨学金を考慮すると、本人に心の余裕はないようだ。

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