新卒一括採用が「日本人に植えつけた」残念な悪癖 世界が求める悪ガキは「自分の喜び」優先で働く

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私が感じる最大の問題とは、「自分の人生の舵を他人に預ける」という価値観を日本人に植えつけてしまったことです。

スタートから骨抜きにされる社会人人生

就職活動が始まると、就活生は髪を短くしたり、黒く染め直して、企業訪問に備えます。エントリーシートを提出し、筆記試験、数回にわたる面接を経て、ようやく企業から内定をもらうという流れを踏みます。これは、大学生が日本で社会人になるために、避けては通れない一種の通過儀礼として定着しています。

その後、内定にいたるわけですが、この時点でも多くの学生は、自分が就職後にどんな仕事をするのか、会社から知らされることはありません。配属されるのは営業か、企画か、はたまた経理部か? さらには東京本社で働けるのか、それともどこか地方の支店に行かされるのか、すべては彼らを受け入れる会社のさじ加減次第なのです。

このように多くの日本人は、社会人人生の最初から自分の仕事を主体的に選ぶことなく、会社の言うがままに働いていることになります。一応、希望も聞かれますが、その希望のとおりになるとは限りません。仮に意に反した結果であったとしても、異議を唱えることは許されないのです。 

このように改めて言葉にすると、とてつもなく理不尽な話なのですが、多くの人が「これが普通だ」と最初から刷り込まれてしまうのが現実です。

スタートからこうなので、その後も会社の命令に関しては従順に受け入れ、異動で業務内容が変わっても、転勤で居住地まで変えられても、唯々諾々と従います。ここには、「自分の人生の舵を自分が握る」という気概は微塵も見受けられません。

言うまでもなく、どんな職種に就くかは人生において極めて重大な問題です。経理に配属されるか、営業に配属されるかでは、その後の社会人人生が大きく変わってしまうのは自明です。この重大な決断を他人任せにしていいはずはありません。

中には「企業が個人の適性を見て、ふさわしい部署に配属しているのだ」と反論をしたくなる方もいるかもしれません。しかし、そもそも社員個々の適性を人事部が正確に見極められるものでしょうか。疑問以外何も浮かんできません。

仮に「その時点での」適性が見極められたとしても、それはあくまでも「その時」に限られたものです。人生は長く、社会の状況も刻一刻と変化します。昨日までの適性が、今日からは重荷になることも大いにありえます。

未来というのは、誰にとっても不確実なものです。そんな不確実な時代を生き抜いていくのに、何よりも重要なのは自分の人生の舵を自分で握ることです。

世界が求めているリーダー、つまり私の言う「悪ガキ」的リーダーは、そうやって生きてきた人ばかりです。

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