「AかつB」のほうが低確率なのにありえると思う訳 人間の非合理さを露呈させる簡単な予測の問題

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AかBかではなく「AもBも」という両方の条件が必要なのに、そっちのシナリオのほうが説得力を持ってしまう理由とは?(写真:metamorworks/PIXTA)
陰謀論やフェイクニュースを信じ、党派的な議論や認知バイアスに陥って、結論を誤る原因とは? ハーバード大学の人気講義が教える、理性の働かせ方を解説した『人はどこまで合理的か』より一部抜粋、再構成してお届けします。

8つの事象がそれぞれ今後10年内に起こる確率は?

予測事業は今や一大ビジネスに成長している。予測は政策、投資、リスク管理、あるいは純粋な好奇心のために、この先、何が待ち構えているかを教えてくれるのだから当然のことだろう。

ではここで、次に挙げる8つの事象について、それぞれが今後10年以内に現実となる可能性について、あなたの予測を次の確率のなかから選んでほしい(可能性の低いものが多いので、確率の低いほうを細かく刻んである)。0.01パーセント未満、0.1パーセント、0.5パーセント、1パーセント、2パーセント、5パーセント、10パーセント、25パーセント、50パーセント以上。

1 サウジアラビアが核兵器を開発する。

2 ベネズエラのニコラス・マドゥロが大統領を辞任する。

3 ロシアに女性大統領が誕生する。

4 新型コロナウイルスよりも感染力の強いウイルスによって、世界は新たなパンデミックに襲われる。

5 ロシアのウラジーミル・プーチンは、憲法上次期大統領選に出馬できないため、プーチン夫人が代わりに出馬し、夫が脇から国を動かせるようにする。

6 ベネズエラで大規模なストライキと暴動が発生し、ニコラス・マドゥロ大統領が辞任に追い込まれる。

7 中国で、新型コロナウイルスよりも感染力の強い呼吸器系ウイルスがコウモリからヒトに感染し、新たなパンデミックが始まる。

8 イランが核兵器を開発して地下核実験を断行し、これに対抗してサウジアラビアも核兵器を開発する。

わたしはある調査で、こうした問いを数百人に投げかけて答えてもらった。平均すると、回答者たちはロシアに女性大統領が誕生する可能性よりも、プーチン夫人が大統領になる可能性のほうが高いと考えた。またマドゥロ大統領が辞任する可能性よりも、ストライキと暴動で辞任に追い込まれる可能性のほうが高いと考えた。

サウジアラビアが核兵器を開発する可能性よりも、イランの核実験に対抗して核兵器を開発する可能性のほうが高いと考えた。そして新たなパンデミックが発生する可能性よりも、中国のコウモリがパンデミックを引き起こす可能性のほうが高いと考えた。

これら4つの可能性の比較について、少なくとも1つくらいはあなたも同意するのではないだろうか? 実際、すべての問いに答えてくれた回答者の86パーセントがそうだった。

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