インドネシア「国産新車」JR東はどう立ち向かうか 近づく日本製中古車の更新、綿密な対策が必須

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日本側にも課題はある。日本の車両メーカーが新車に意欲を見せたとしても、リスクの大きい海外向け案件となるとそう簡単ではない。とくに、インドネシア政府を納得させる方法は、ノックダウン方式による現地生産しか術はない。つまり、国営車両製造会社(INKA)マディウン工場で、日本の標準型通勤車両に近いものを製造することになる。

ジャカルタでは約1000両の日本製中古車両が活躍している(筆者撮影)

これまで同工場には日本の各メーカーからさまざまな技術支援がなされてきた。しかし、INKAが共同生産のパートナーとして日本のメーカーにオファーした際はすべて断られたという経緯がある。それが巡り巡って、シュタドラーとの協業に至ったわけである。

日本の車両メーカーの現状を見る限り、仮に日本国内で生産するとしても東南アジア案件はリスクが大きい。JR東日本グループの総合車両製作所はODAで進められているフィリピンの南北通勤鉄道向け車両8両編成13本を2019年に受注し、2021年から一部の出荷が始まっているが、現地の車両基地の整備が遅れているため、車両納入にも影響が出ることが予想される。

「日本政府は民間任せ」

もしKCIに日本のメーカーが新型車両を納入するとすれば、完全民間ベースの案件になる。しかし、それでも日本政府の介入は必要である。KAI・KCIは事実上民営化されているとはいえ国営企業省傘下にあることには変わりなく、まして国策として「車両国産化」が定められてしまった以上、日本製車両導入の突破口を作れるのは日本政府以外にない。

また、KCIからすれば、JRはKAIと同じ国鉄という認識で、完全な民間企業であることはほとんど知られていない。新車を売り込みたいなら当然、日本政府の人間を連れてきて、インドネシアの政府要人との交渉もやってくれると思っている。事なかれ主義のインドネシア人、そこはしたたかだ。日本製車両が欲しいと心の中で思っていても、自らリスクは負わない。

だが、現実には、日本政府が売り込みに動くなどということはほぼあり得ない。インドネシアで古くからビジネスを展開している大手商社マンは、「日本政府は民間任せで、いわゆるトップセールスを一切しない」と語る。「欧米各国は役人が自国製品を手にやってきて、有無を言わさず買わせていく。対して日本政府といえば、企業がまったく得しない、日本製品のアピールすらしないODA案件の“実績”に歓喜しているだけ。先の岸田(首相)の来イがまさにそうでしょう」と語気を強める。

これはまさに今のインドネシアの状況、とくに鉄道案件の置かれた状況であり、大使館はぐうの音も出ないだろう。シュタドラーでさえ、1社単独でINKAとの合弁を取り付けたとは思えず、スイス政府がバックについているはずである。

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