インドネシア「国産新車」JR東はどう立ち向かうか 近づく日本製中古車の更新、綿密な対策が必須

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今回の訪問の主目的は、覚書に基づく引き続きの協力関係の確認と、具体化である。JR東日本とKAI・KCIの協力覚書は2021年12月に更新され、「教育と研修」「車両と部品の供給」「公共交通志向型都市開発(TOD)」が柱になっている。

オンラインで日本とインドネシアをつないで行った「205系感謝メッセージ集贈呈式」でアルバムを渡す様子(写真:JR東日本)

「教育と研修」は、コロナ禍の2年間、オンラインで日本とインドネシアの現場とつなぐことで継続してきた。

2021年8月には「武蔵野線205系感謝メッセージ集贈呈式」なるものもオンラインで開催された。JRの現業社員発案によるイベントで、武蔵野線から205系が引退するにあたり、イベント時に利用者から集めたメッセージの一部を、自らインドネシア語に訳し、KCIに届けた。

本来は直接手渡す予定であったそうだが、国境を越える移動が困難な中でも、オンラインで交流が継続できたのは不幸中の幸いと言えよう。そして、JR東日本社内でも、現場レベルで、インドネシアが遠いどこかの国から、より身近な存在になっていることを感じさせる。

純正パーツの安定供給が可能に

ただ、「やはり現地で実物を見て触れて行う研修に勝るものはない」と語るのは、2021年11月からKCIに出向しているメンテナンスエンジニア中田智明氏だ。アドバイザーとして4代目にあたる。

JR東日本は2015年からKCIにアドバイザーとして社員を1名継続的に出向させており、ほかにJR東日本テクノロジー(JRTM)、JR東日本商事(EJRT)もジャカルタに事務所を構えている。JRの当地での事業というと中古車両に対するメンテナンス教育や支援が注目されがちだが、ビジネスとして車両のスペアパーツ供給や架線関係資材をはじめとするインフラ部分への資材供給を展開しており、今やインドネシアの鉄道産業を支える一員になっている。

KCIによると、部品供給については調達に関する契約変更が行われ、検査サイクル等から算定された必要量を購入できるようになり、より安定した純正スペアパーツ供給が可能になったという。GE(ゼネラル・エレクトリック)が数十年前からKAIに対して行っている部品供給ビジネスのスタイルであり、ようやくKCIでも同様のサプライが実現した。

供給側が安定した収益を確保できることはさることながら、純正部品を周期通りに交換することにより、車両故障の軽減、そして車両そのものの延命に繋がり、鉄道会社側にとってもメリットだ。何かと「安かろう、悪かろう」と言われたKCIの購買姿勢を変化させたのは大きい。

教育や部品供給以外の柱である「公共交通志向型都市開発(TOD)」は、近年、インドネシアの交通政策の議題に必ず上がってくるキーワードだ。

ただ、日本人がイメージするような、駅を中心とした2次交通アクセスを含めた面的な都市開発ではない。駅隣接の有休国有地に高層アパートメントを建設し、下層階がショッピング施設となる。つまり、都市開発というよりも、駅開発である。普段の生活は、駅空間だけで完結することを目指している。となれば、エキナカ開発との親和性も高くなる。

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