インドネシア「国産新車」JR東はどう立ち向かうか 近づく日本製中古車の更新、綿密な対策が必須
筆者はたびたび指摘しているが、日本政府が掲げる鉄道インフラ輸出政策はあまりにも無責任だ。リスクの大きい東南アジア案件に、政府による仲介、保証は不可欠である。
ドイツや韓国など、インドネシアの鉄道案件に強いとされる国々は、アドバイザー等と称して関係省庁に人員を送り、情報収集と水面下でのロビー活動を行っている。JICAにも鉄道専門家を称する人間がほぼ常駐しており、インドネシアが日本にとって重点地域と認識されていることに間違いはないが(インドネシア以外で、常に専門家を置くことは稀である)、あまりにも市場に疎いと言わざるを得ない。
前出の中田氏は、現在走行している205系について、「このまま何もしなければ持って10年くらい」と、中古車両の先行きを案じる。いくら物持ちがいいとは言え、経年車のグループはあと数年で製造から40年を迎える。
JR東日本で現役の205系も残りわずかであり、部品の融通が利く211系も合わせ、スペアパーツ供給にも支障が出てくる。大手電機メーカーでは直流電動機(モーター)の生産を終えており、修理で対応できないものに対しては、廃車からの部品取りでしのぐしかない。「VVVFインバータ化改造されていない205系0番台のグループに対しては、早急に機器更新をする必要がある」と同氏は訴える。ただ、機器更新は中古車導入に比べると多額の予算を要するため、KCIは及び腰である。
20年の積み重ねを無にしないために
しかし、機器更新、新車導入いずれを選択するとしても、今から綿密な計画を立て、適切な対応を取らなければ、1000両を超えるジャカルタ首都圏の日本車は一気に失われてしまう。筆者はシュタドラーの車両を入れるなと言っているわけではない。しかし、これまで草の根的努力を20年間積み上げてきたものを水泡に帰させていいものか。日本車の置き換えは日本車でやらなければ意味がない。
JR東日本は、鉄道分野はもちろん、生活関連産業までさまざまな事業をインドネシアで手掛け、海外事業の中でもとくに大きなボリュームを占めている。そのきっかけを作ったのは、中古車両譲渡と言っても過言ではない。だが、今やそれは不可能になった。もちろん、中古車両の輸出はあくまで1つのステップであり、まずは機器更新、そして最終的な新車輸出を見据えていたことは想像にかたくないが、インドネシアの成長スピードを少し見誤っていたかもしれない。
ここで突如浮上した「通勤車両国産化策」をどう乗り切るか。車両の設計・製造から運行管理、保守メンテナンス、部品供給、さらに沿線開発や飲食・小売りと鉄道に関わることなら何でもできるトータルコーディネーターとして、JR東日本グループを挙げての力量が試されている。
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