“不可抗力”という言葉がある。天変地異や、人の力では予測できず防げない事象を意味する。
一般的な交通事故では、法令を遵守し万全を期したつもりでも、ドライバーの体調急変など予測不可能な事態に陥り(≒不可抗力により)事故につながるケースがあり、これが年間300件ほど発生している。
国土交通省では2016年にこうした体調急変に対応する「ドライバー異常時対応システム(EDSS /Emergency Driving Stop System)」のガイドラインを制定。現在、システムがドライバー異常を検知して車両停止までを制御するEDSSが具現化され、複数の乗用車、大型商用車に実装済みだ(東洋経済オンライン「マツダが実現した『緊急時に命守る』スゴ技の正体」)。
飲酒運転は根絶できるはずなのに
一方、飲酒運転は人の自制心によって100%防げる。「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」は鉄の掟だ。よって飲酒運転による事故はゼロにする、すなわち根絶することが可能なはずなのだ。
にもかかわらず飲酒運転の摘発や事故は後を絶たない。警察庁によると飲酒した場合の死亡事故率は、飲酒事故以外の死亡事故率よりも約9.2倍高いという(2021年)。
こうした飲酒死亡事故ではさまざまな統計データが示されており、たとえば年齢別に免許保有者10万人当たりの発生件数でみると30歳未満(16~29歳)が最多で、30~85歳以上よりも2~4.6倍高い。
発生時間で区切ると30歳未満では22時から6時までの間に78%が発生し、65歳以上では14時から22時までに66%が発生と時間が早まる。さらに、運転者の飲酒状況は酒酔い&酒気帯び(呼気0.25mg/ℓ以上)が62%を占めるという驚きのデータも示された。
加えて事故類別で見ると車両単独での発生率が高く、酒酔いでは59%が、酒気帯びでは64.6%にのぼる。また、死亡者はドライバーが68%、同乗者が7%であるのに対して、第三者は25%と同乗者よりも高い値であることがわかった。これらの統計からも、飲酒運転が社会的損失度を高めていることは明らかだ。
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