過去2回にわたり、飲酒が運転操作に及ぼす悪影響について解説した。飲酒によって運転操作に必要な正しい認知、判断、操作ができなくなり、悲惨な事故に直結することもわかった。そして、後を絶たない飲酒運転には、厳しい行政処分や罰則がある。
旅客の命を預かる航空業界においても、飲酒状態での業務は御法度だ。人が航空機を操縦するからだ。もっとも、自動車以上に先進安全技術の導入が進む航空業界では、人の手を介さずに安全に航行/飛行できるシーンが増えている。しかし、最終的な責任は人である機長が担う。
ただ、ここ数年で見ても全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)、ソラシドエアなどでパイロットの飲酒が問題になったことを記憶している人も少なくないだろう。
航空従事者の飲酒基準はかなり厳格
航空従事者である操縦士および客室乗務員には、厳格な飲酒ルールも徹底されたうえに、アルコール検査の義務化(法104条関係)が課される。2019年1月31日に制定された基準では、血中濃度0.2g/ℓ未満、呼気中濃度0.09mg/ℓ未満と定められた。
本連載第2回(「飲酒運転の罪と罰」どれだけ重いか知ってますか)で解説したとおり、車両の運転免許では、呼気中濃度0.15~0.25mg/ℓ未満が「酒気帯び」なので、比較すれば航空従事者の飲酒基準はかなり厳しい。
具体的な飲酒対策は以下の通り。対象は操縦士、客室乗務員、運航前整備の作業者、運航管理者で、該当者には業務前のアルコール検知器(ストロー式)による検査を受けることが義務化されている。
万が一、アルコールが検知された場合には業務禁止となる。また、管理者側には検査時の不正(なりすまし/すり抜け)防止体制の義務化に加え、検査には第三者の立ち会いが義務化されている。この立ち会いには、モニター等の活用も認められているが、いずれにしろ厳しい措置だ。当然、検査情報の記録(日時、氏名、結果等)の保存も義務化された。
さらに、操縦士および客室乗務員に対しては飛行勤務前8時間以内の飲酒が禁止されている。また両者は、機上で機体や旅客へ直接運航サービス(操縦や接客)を行うことから、乗務後(≒目的地へ到着した後)のアルコール検査も義務化されているのだ。
自動車にしろ、航空機にしろ、正しい操作が求められる場合、それを妨げる飲酒は排除が不可欠。しかし、同時に「酒は百薬の長」であることも事実。飲酒した状態での運転が悪いわけで、適正飲酒を心掛ければ心身ともにストレス発散へとつながる。
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