和歌山のパンダ「ひとり立ち」と同時に引っ越す訳 そもそもなぜパンダは親元を離れるのか?

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「パンダラブ」では、楓浜の姉で双子の桜浜(おうひん、7歳)と桃浜(とうひん、7歳)、結浜(ゆいひん、5歳)も暮らしている。姉妹とはいえ、年齢が離れていて体格が異なり、縄張りや食べ物を巡って攻撃される恐れがあるので、一緒の部屋には入れない。ちなみに年齢が同じ双子も、幼い頃は一緒にいても、成長すれば縄張り意識が生まれて相手を攻撃しかねないので別々の部屋にする。

楓浜は、練習で「パンダラブ」に行ったとき、桜浜・桃浜と初めて対面した。「楓浜がケージに入ってやって来たので、桜浜と桃浜は、まずケージの音に反応しました。知らないパンダが来たことは、どのパンダも認識していると思います。環境に馴らすため、他のパンダと隣り合う運動場で、ガラス越しに顔合わせも行いました」(中谷さん)。

結浜は以前「ブリーディングセンター」で暮らしていたとき、楓浜と顔を合わせたことがある。「パンダラブ」で再会したときは、桜浜や桃浜に比べ、反応がやや薄かった。それぞれの性格もあるのだろう。楓浜と姉たちは、相手を過剰に威嚇することもなく、基本的に互いをあまり気にしていないそうだ。

楓浜(左)と姉の桜浜。透明のガラスを挟んで互いの姿が見える。2022年5月29日(筆者撮影)

寝室は隣同士にしない

「パンダラブ」の屋内運動場は、透明のガラスで仕切られている。筆者は、楓浜に限らずパンダ2頭がこのガラスを挟んで寄り添うように竹を食べている様子を何度も見たことがある。何か意味はあるのだろうか。パンダは視力が弱いとされるが、見えているのだろうか。中谷さんはこう語る。

「互いの姿は見えているでしょうから、興味を持って、なにかしらアクションをしていることはあると思います。ただ、例えば桜浜がいるから、ほかのパンダが近づくのではなく、歩いていて、その先にたまたま桜浜がいる、ということが時々あるのかと推測しています。

私たちが隣の運動場を掃除していると、ガラス越しにパンダが私たちを見ていることもあるので、パンダ同士だからというわけでもないと思います」

「パンダラブ」にいる4頭は、夜は寝室で過ごしている。「パンダラブ」には寝室が6部屋あり、1部屋が独立しているタイプと、2部屋が隣り合わせのタイプがある。夜は飼育スタッフがずっと見ていられないので、部屋割りは、通路などを隔てて、パンダが隣同士にならないように配慮している。

姉妹でコミュニケーションを取ることもあるのだろうか。中谷さんに尋ねると、「群れで生活する動物なら、鳴き声などで情報交換をすることもあります。でもパンダは単独で生活する動物なので、鳴き声でほかのパンダとコミュニケーションをとることはほとんどないに等しいと思います」とのことだ。

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