和歌山のパンダ「ひとり立ち」と同時に引っ越す訳 そもそもなぜパンダは親元を離れるのか?

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子どものひとり立ちは、母親が繁殖できるようにするためという場合もある。2000年9月6日に生まれた良浜は、生後4カ月ほどでひとり立ちした。当時はアドベンチャーワールドに限らず、パンダに関する知見が豊富な中国でも、それくらいの時期にひとり立ちさせていた。

初めての出産で戸惑う様子を見せた良浜

世界のパンダの数が現在よりもはるかに少なく、絶滅の危険度が高かったことも理由だろう。パンダは授乳していると繁殖できないので、子どもをひとり立ちさせて、母親が繁殖できるようにするというわけだ。

しかしその後の研究で、母親と過ごす期間が短いパンダは、成長すると、ほかのパンダと上手にコミュニケーションをとれない場合があるとわかった。パンダは単独で生きる動物だが、交尾するときや、子育てするとき・されるときなどは、ほかのパンダと接する。

良浜は、初めての出産・子育てでは戸惑う様子を見せた。そのため、このとき生まれた双子の梅浜(めいひん)と永浜(えいひん)は、わずか177日齢で親離れした。その後の良浜は愛情深く、立派に子育てしている。

楓浜がひとり立ちしたことで、次の繁殖はどうなるのか。楓浜の父親の永明(えいめい)は2022年9月に30歳、良浜は22歳となる。パンダの年齢のおよそ3倍が人間の年齢という説を採用すれば、永明は人間なら約90歳、良浜は約66歳になる。永明と良浜は今後も繁殖可能なのだろうか。アドベンチャーワールドに尋ねたところ、「それぞれの様子をみて判断してまいります」とのことだ。

楓浜がお姉さんになるかはわからないが、引き続きすくすくと育ってほしい。

楓浜(右)の1歳の誕生日に授乳する良浜。2021年11月22日(筆者撮影)
中川 美帆 パンダジャーナリスト

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なかがわ みほ / Miho Nakagawa

福岡県生まれ、早稲田大学教育学部卒。毎日新聞出版「週刊エコノミスト」などの記者を経て、ジャイアントパンダに関わる各分野の専門家に取材している。訪れたパンダの飼育地は、日本(4カ所)、中国本土(11カ所)、香港、マカオ、台湾、韓国、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、カナダ(2カ所)、アメリカ(4カ所)、メキシコ、ベルギー、スペイン、オーストリア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、フィンランド、デンマーク、ロシア。近著『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)

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