162ページにわたるSMBC日興証券の相場操縦事件に関する調査報告書。だが、“事件の肝”である「買い支え」についてはほとんど説明できないままだった。
6月24日、SMBC日興は都内の本社で記者会見を開き、同日調査委員会から受領した報告書について説明した。SMBC日興は上場企業10社の株価を不正に操作したとして、証券取引等監視委員会と東京地方検察庁の調査や捜査を受け、2022年4月に法人としてのSMBC日興のほか、元副社長や元専務執行役員など6人が起訴されている。
大株主からSMBC日興が株式を買い取り、個人投資家などに売りさばく「ブロックオファー」と呼ばれる取引の背後で、自社の資金と口座を使う自己勘定で同じ銘柄を買い付け、株価が下がりすぎないようにしていた行為が、違法と疑われている。
報告書では新事実も判明
役員の逮捕や起訴を受けて、SMBC日興は社外の弁護士などでつくる調査委員会を立ち上げた。委員長には仙台高裁長官を務めた河合健司氏が就いたほか、元公安調査庁長官の野々上尚氏と、T&K法律事務所の角谷直紀氏が委員を務めた。
公表された「調査報告書(開示版)」にはSMBC日興に対する厳しい文言が並んだ。「SMBC日興証券のガバナンス態勢は、全般において機能不全に陥っていた」「規範意識、高度の倫理観が社内全般において希薄だった」「(コンプライアンス部門が)異常な状況であると言わざるを得ず、看過できない」といった具合だ。
また、新たな事実も明らかになった。1つ目は、SMBC日興の元副社長から近藤雄一郎社長に送られたメールの中に、自己勘定の買い支えを行っていることを示唆する内容が含まれていたということだ。近藤社長に送られたメールの添付ファイルには「ブロックオファーで値崩れした時に自己ポジションを用いて価格をサポート」との記載があった。
会見で近藤社長はこの部分を読み、買い支えについて認識していたかについて、「当時の関心はメールの別の部分にあり、該当の部分については読んだか記憶にない」「もし読んでいれば(買い支えを)やめさせていた」と説明。調査委員会も社長が買い支え行為を認識していたとは認定しなかった。
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