独立調査委員会や第三者委員会の調査報告書で一般的な「黒塗り」であればどの程度の量の文章が非開示になったのかある程度推し量ることができる。が、SMBC日興の調査報告書では全編で非開示になった部分が「(略)」に置き換えられており、失われた情報の量すらわからないようになっている。
違法行為の疑いをかけられている買い支えはいつから、誰の指示で、なぜ始まったのか。SMBC日興の野津和博専務は6月24日の会見で「公判に影響する可能性があるので回答を控えたい」とだけ答えた。
完全版の調査報告書には買い支えの詳細についての記載があるのか、最終的には会社として説明するつもりがあるのかという点についても、「会社としてはきちんと認識していきたい」と明言しなかった。
また、一般的には報告書を作成した調査委員会が会社側とは別に会見を開いて内容を説明することが多いが、今回は調査委員からの説明機会はなかった。会社側の説明によれば「(調査委員会が)刑事手続きが進行中のため、開示版の報告書以上のことについてコメントできないとしている」(野津専務)ためだという。
ステークホルダーへの説明は十分か
調査委員会が指摘するとおり、市場を歪ませる不公正な取引を見逃してしまっていたことの背景には、SMBC日興の構造的な問題があるのだろう。コンプライアンス部門の人員が不足していたことや、何か問題が起きたときに経営陣まで報告するための体制整備が足りていなかったという点も重要なポイントだ。
だが、違法とされている買い支え行為が組織的に行われたことだったのか、あるいは個別のトレーダーの問題だったとすれば、どうして違法と認定されるリスクを冒してまで買い支えを行わなければならなかったのか。こうした買い支えに関する具体的な調査内容がなければ、提案されている再発防止策が十分かどうかを判断できない。
日本弁護士連合会が定めた第三者委員会ガイドラインには「経営者等自身のためではなく、すべてのステーク・ホルダーのために調査を実施し、それを対外公表することで、最終的には企業等の信頼と持続可能性を回復することを目的とする」とある。
今回の調査委員会はガイドラインに「準拠するものではない」としている一方で、「趣旨を十分に踏まえ」とも記している。はたして、すべてのステークホルダーが納得できるだけの原因究明をできているか。会社だけではなく調査委員会も真価が問われている。
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