戦後77年の今だからこそ「ナチス映画」が持つ意義 レイシズムは世界中で、依然として存在する

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①第二次大戦の関係者が高齢化し、亡くなっていって「タブー」とされてきた歴史的事実の映画化が可能になった。「ヴェルディヴ事件」を、その実行者がフランスの官憲であることを含めてリアルに再現した一連の作品がその代表例だ。

第二次世界大戦が「歴史」化した

②同様に、第二次大戦が歴史となり、映画の題材として積極的に取り扱われるようになった。『帰ってきたヒトラー』や、2本連続して作られたハイドリヒ暗殺もの、ロシア製のゲーム要素のある娯楽戦争映画などもこれにあたる。元々、ホロコーストの悲劇や第二次大戦中のエピソードは商業映画の題材として多くの人を引き付ける力がある。

③2010年代、特に欧州において右翼勢力が伸長した。ドイツの「ドイツのための選択肢」、オーストリアの「オーストリア自由党」、フランスでは「国民戦線(現・国民連合)」などが国政選挙、地方選挙、大統領選挙等で躍進した。

アメリカでも2016年から2020まで排外主義的なトランプが大統領を務め、日本においても右翼的な性格を持つ第二次安倍政権が長期間続いた(2012年~2020年)。このような保守、右翼、国家主義的勢力の拡大に対する危機感から、かつてのナチスの行いを顧みる関連映画が多く製作され、リベラルな立場の観客がこれを求めたと言えるだろう。

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同時にグローバリゼーションの潮流の中で、各国の共同製作も増えていった。日本においても、これだけ多数の外国製ヒトラー・ナチス映画が輸入され、公開されていることは特筆に値することである。

④戦争や紛争は地球上のどこかで起こり続けている。異なる人種や民族というただそれだけの理由で他人を憎み、攻撃するレイシズムは厳然として存在する。障がいを持つ人、性的マイノリティなどへの差別は今もある。

関連映画で描かれることは遠い昔のことではない。

戦争や差別の記憶を留め、振り返り、今より一歩でも、平和・平等であらゆる人々が暮らしやすい世界に進むために、「ヒトラー・ナチス映画」は今日的な存在価値を持つのである。

馬庭 教二 文芸カルチャー誌エグゼクティブプロデューサー

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まにわ きょうじ / Kyoji Maniwa

1959年島根県生まれ。大学卒業後、児童書・歴史書出版社勤務の後、角
川書店(現KADOKAWA)入社。「ザテレビジョン」「関西ウォーカー」
「月刊フィーチャー」等情報誌、文芸カルチャー誌編集長を歴任。雑誌
局長を経て、現在、エグゼクティブプロデューサー。著書に『1970年
代のプログレ ―5大バンドの素晴らしき世界』(小社刊)がある。

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