桑島:はい、おっしゃるとおりです(笑)。
田村:この記事をお読みになるのは企業の方々が多いと思いますが、ルール作りの強化は、企業だけの責任ではもちろんありませんし、政府自身はもちろんのこと、場合によっては、NGOも含めて、日本のすべてのプレーヤーがモードチェンジをしなければいけないと思っています。
桑島さんもお察しのように、日本はルール形成という面での国際的な立ち回りが必ずしも上手でなかったことは確かですが、それは企業だけではなくて、政府自身もそうであることは率直に認めざるをえません。
したがって、官民挙げて国際感覚を磨き、グローバル・ルール・メーキングの作法にのっとって、主たるプレーヤーにならなければいけない。それにはもちろん英語力、コミュニケーション力などさまざまな要素が必要です。日本がグローバル・ルール・メーキングのプレーヤーになるために克服すべき弱点はまだたくさんあります。これは一朝一夕には解決しません。したがいまして、ぜひ誤解していただきたくないのは、このルール形成戦略というのは1年、2年で成果が出るものではないということですね。
理念・ロジックを重視したロビイングの常態化へ
「ルール形成戦略」の推進に当たっては、「アクロス・ザ・バウンダリー(国境を越えて)、アクロス・ザ・セクターズ(業種を越えて)、アクロス・ザ・ジェネレーションズ(世代を越えて)」という考え方が大事だと思っています。
つまり、ルール形成というのは、政府とか官とか民とかNGOとかそういうセクターを越えて全員で一緒に考えて取り組むべきことだということです。
また、日本が、21世紀、あるいはその先も、望むらくは今以上の大きな存在感を持った国であり続けるために、長期間にわたってオールジャパンで取り組まなければいけないテーマだということでもあります。
この「ルール形成戦略室」が、経済産業省の中の通商政策局につくられた背景を少しお話します。通商政策局は、WTO交渉とか、あるいはAPECとかOECDとか、あるいは2国間の通商交渉とか、国際レジームを作ることをなりわいにしてきた部局なので、このノウハウを活用し、さらに育てて、日本全体のために役立てることを目指しているわけです。もちろん、そのためには、われわれの国際ルール作りの力は、今よりも飛躍的に向上させる必要があります。一朝一夕には行きません。
しかしながら、先進国としての日本経済の現在の発展段階と、今後の国内市場の縮小傾向を考えると、社会課題解決のような「バリュー」を基盤とした非価格競争力を前面に出す、そしてその発揮のための国際ルール形成に積極的に関与する、という戦略以外に、日本という国がサバイブしていく道はないと思います。
10年がかりでもいいので、そういった力を養っていく必要があります。そのためにも、まずは日本国内で理念重視・ロジック重視のロビイングが常態化していくことも、ひとつの要素になるかもしれません。
桑島:本当にそうだと思います。いつも思うのですが、日本国内でできないことを、いきなり海外でやるほうが難しい。まずは国内で練習したほうがいいですね(笑)。この続きは後編でお伺いしたいと思います。
(構成:長山清子)
※この記事の後編は、2月15日(日)に公開します
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