終末期患者を看てきたナースが思う「幸せな最期」 「つらい終末期を明るくすることはできる」
もちろん病状によっては、行事に参加することすら厳しい場合もある。それでも「できること」はあるという。
例えば、本人が会いたい人に声をかけて病室に呼んだり、オンラインでつないで会話をしたりするだけでも、楽しい時間は生み出せる。状況が許すなら、前田さんが実践したように、病室や自宅の天井に本人の好きな映像や画像を映すこともできそうだ。
「身体への負担をあまりかけずにできることって、実はたくさんあると思うんです。病室にお花を飾るように、毎日に小さな楽しみという“彩り”を添えていく。そうすることで、暗くなりがちな闘病生活を少しでも明るくすることができると感じます」
また、闘病生活をより快適に過ごすには、身体の苦痛を和らげることも大切だと付け加える。
「医師から『そろそろ緩和ケアに移行しましょう』と告げられると、『もう積極的な治療をしてもらえないのか』と悲観して、断ってしまう患者さんが多いんです。緩和治療を拒否したことで、すごく痛い思いをされながら入院している方も大勢います。
緩和ケアにおいては、身体の苦痛を和らげつつ、化学療法など積極的な治療を行うこともできるので、医師に相談してみるといいかもしれません。治療も生きがいのある暮らしも、あきらめる必要はないと考えます」
エンディングノートに書くだけでは不十分
終末期を幸せに過ごすために、もう1つ重要なことがあると前田さん。それは、終末期をどこでどう過ごしたいのか、どのような最期を迎えたいのか、延命治療の有無も含めて、本人と家族、医療従事者の間で話し合っておくことだ。
いわゆるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)、通称「人生会議」の必要性を訴える。
「『自分の意思はエンディングノートに書いておいたから大丈夫』という人がいますが、それだけでは不十分なんですね。その意思が家族や身近な人に伝わっていなければ、いざというときに周りが適切な対応ができなくなり、結果的に自分が望まない最期を迎える危険性があります」
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