終末期患者を看てきたナースが思う「幸せな最期」 「つらい終末期を明るくすることはできる」
義母は病室に戻ると、でき上がったばかりのフォトウェディングのアルバムを自分の胸元に置いて、眺めてはまた自分の胸元に置く。看護師が病室に来るたびに、うれしそうに写真を披露した。
娘の結婚を見届けた安心感からか、その直後から起きられる時間が短くなった。撮影の日から3週間後。義母はもう苦しむことなく、穏やかな顔で息を引き取った。
病に苦しむ母に目標をつくってあげたかった
「妻はフォトウェディングを母に贈ることによって、『目標をつくりたかった』と言っていました。治る見込みがない中で闘病生活を送っていると、どうしても明るい話題がなくなっていきます。それがフォトウェディングを企画したことで、義母や僕たち家族に心が湧き立つような目標が生まれたんです。
がんが進行するにつれ、身体はそうとうしんどかったと思いますが、それ以上に幸せを感じてくれたのではないかと。その証拠に、義母は最期に屈託のない笑顔をたくさん見せてくれました」
この経験は、前田さんが「かなえるナース」の事業をスタートする、大きなきっかけにもなったと語る。
結婚式など家族のお祝い事に出席する、あるいは行きたい土地に旅行に行くなど、イベント事を企画することで「未来への楽しみ」が生まれ、治療のためだけの日々が、生きがいのある毎日に変わる。
「かなえるナースでお手伝いした患者さんの中には、行事に向けて気力や活力が増し、それまでもうろうとしていた意識がはっきりする方もいます。ベッドから起き上がれるようになったり、食事がとれるようになったりすることもありますね。実際、宣告された余命を大幅に超えて、半年以上長生きした方もいます。生きがいを見いだしたことによって、生命力が上がったのかもしれません」
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