坂上忍さん「保護活動を商売に」に込められた意地 犬・猫の保護ハウス「さかがみ家」が目指す未来

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――私も、飼い主さんがどう愛情をかけてくれるかのほうが大事だと思います。その愛情が動物たちに伝われば、楽しく幸せに暮らしていけるでしょうから。

坂上:絶対にそう。「人」ですよね。

――なぜ、収益を上げながら自力運営していく道を選択したのですか?

坂上:保護活動の勉強をしているなかで、初めに疑問に思ったのは、保護施設が「寄付」と「クラウドファンディング」と「ボランティア」の3点セットで運営されているということです。主催者の方やボランティアさんの話を伺っていると、どうしてもそのやり方では無理があると思うんです。寄付だけでは回らなかったり、ボランティア頼りで慢性的な人手不足であったり。そうなると保護した子に目が行き届かなかったり、お世話をする人が疲弊してしまったりするんです。

もちろん寄付を募れば多少はお金が集まります。でも、波がありますし、なかには寄付金を目当てにした悪いやつも出てくるというのが現状なんです。なぜ「自立」という発想がないのかなと。なぜ動物の命を守るという善意のなかで、自分の居場所を作って満足しているところで止まってしまっているのかなと。

みなさんがやられていることは尊い作業なんだけれども、そこをどうにかできないかと思ったんです。普通ならやり方を決めてからスタートするのだと思いますが、僕の場合はまず行動を起こそうと思ったわけです。

ソファーでくつろぐ保護犬たち(写真:著者提供)

保護活動でも利益を生む必要がある

――海外では自立運営している保護団体等が多いです。オリジナル商品を販売したり、セミナーなどを開催してその参加費を運営費に回したり。大手スポンサーが付いているところもあります。

坂上:アメリカやヨーロッパは寄付金の桁が違いますよね。しかも、日本よりスポンサーを見つけやすいシステムができているので、スポンサーがいなくなっても、すぐに別のスポンサーが付きます。日本もスポンサーが付いているところが多少ありますけど、景気に左右される部分が大きくて。知り合いの保護施設は、コロナでスポンサー企業が倒産してしまい、運営できなくなりました。

日本は不特定多数の人から寄付を集めて運営し、足りなければ自分の生活費をつぎ込むという人が多い。利益を生むことを考えない限り、皆が疲弊してしまうのではないかと思うんです。

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