「株主が力を持ち、変化を起こせることを示した」
香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの最高投資責任者であるセス・フィッシャー氏は、6月23日の午後に開いた説明会でそう振り返った。
オアシスは同日開催された東証プライム上場のエレベーター・エスカレーター大手、フジテックの株主総会に向け、創業家出身の内山高一社長(70)の再任議案への反対運動を展開してきた。内山氏が個人の利益のために権限を濫用していると指摘し、独自の調査に基づく資料を公開。ほかの株主の賛同を得ようと動いており、その結果が株主総会で明らかになるはずだった。
株主が意見表明する機会を奪った
ところが、総会が開かれるわずか1時間前の午前9時、フジテックが衝撃の発表をした。内山社長の再任議案を取り下げたのだ。総会当日に会社が提案した現職社長の取締役再任案を撤回するのは、まさに異例の事態だ。
内山氏の再任以外の議案は予定通り株主総会に諮られ、すべて可決された。内山氏は代表取締役から外れ、取締役でも執行役員でもない「会長」となる。後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就くことになった。
総会当日という異例のタイミングで撤回に至ったのはなぜか。オアシスのセス氏は「大幅な反対票で負けることを避けるためだろう」と指摘し、「株主は異議を唱える機会を奪われた」と批判をしている。
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