みずほFGや住友不動産、注目すべき「株主総会」 異質な会社提案に株主はどう判断を下すのか

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2022年1月、業務改善命令を受けた新体制発足に伴う記者会見に臨んだみずほFGの小林いずみ取締役会議長(左端)と甲斐中辰夫指名委員長(左から2番目)(撮影:今井康一)

「決して賛成ではありません」――。ある金融庁の幹部はみずほフィナンシャルグループ(FG)の取締役候補者のリストを見て、苦い顔でそう答えた。

6月21日に開催されるみずほFGの株主総会。そこで提案される取締役選任議案の候補者には、代わり映えのしない名前が並んでいる。候補となった12人のうち、新任は2月に社長に就任した木原正裕氏のみ。ほかの11人はすべて再任の候補となっている。

これを見た市場関係者からは驚きの声が相次いだ。なぜならば、再任となる取締役候補たちは金融庁から「ダメ出し」を食らった面々だからだ。

みずほFGは、2021年2月以降、立て続けにシステム障害を起こし、金融庁から2度にわたって業務改善命令を出されるという失態を犯した。同社は2002年、2011年に大規模な障害を起こした過去を持ち、システムに対する認識や管理体制の甘さが今もなお残っていることが浮き彫りになった。

一覧の障害を受けて、金融庁が出した業務改善命令では、「取締役会において、構造改革に伴うシステムリスクに係る人員削減計画と業務量の状況について、十分に審議を行っていない」など、取締役会が名指しをされ、問題を指摘されることになった。

木原新社長の強い意志

それでもなお同じ面々を起用するという今回の選任議案に対し、市場関係者からは厳しい目が向けられている。議決権行使助言会社のISSは小林いずみ氏、甲斐中辰夫氏、若林資典氏、平間久顕氏、佐藤良二氏、今井誠司氏の6人に反対を推奨。同じく議決権行使助言会社のグラスルイスも甲斐中氏と若林氏に反対を推奨している。

こうした反応はある程度予想されていたはずだ。それでは、みずほはなぜ今回の選択に至ったのか。冒頭の金融庁の幹部は「最終的には、木原社長が強い意志で決めた」という。

金融庁としても「本来は変更をさせたいところだが、代わりのリストが出せるわけでもなく、許可するしかなかった」(同)。障害再発のリスクが完全に払拭されているとは言い難い中で、みずほの取締役を務めてくれる人材を探すのは簡単なことではなかったということだろう。

木原氏は2月に就任したばかり。現時点では執行役も含めて経営陣に大きなテコ入れはしていない。ただ、今後は徐々に木原色が見えてくるはずだ。取締役についても、これから選定作業を進め、来年以降に見直しがかかることになるだろう。

株主たちはこうした木原氏の体制づくりを待つことをよしとし、金融庁からダメ出しを受けた取締役会で業務改善が可能と判断するのか。6月21日の総会でその成否が明らかになる。

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