みずほFGや住友不動産、注目すべき「株主総会」 異質な会社提案に株主はどう判断を下すのか

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6月29日に開催予定の株主総会において、買収防衛策の更新を提案するのが住友不動産だ。同社は2007年5月に取締役会で決議して以来、3年ごとに買収防衛策を更新してきた。今回の株主総会で6度目の会社提案となる。

背景にあるのは、住友不が保有するオフィスビルなどの不動産を狙うアクティビストに対する警戒感だ。保有する不動産の時価は、2021年3月末時点で6兆8739億円。潤沢なビルを売却しようと企てる株主への牽制だ。

住友不動産の買収防衛策の更新は、今回で6度目となる(記者撮影)

保有ビルを売却させられることは、住友不にとって死活問題である。同社はほかの財閥系デベロッパーとは異なり、開発したビルを売却せず自社保有に徹してきたためだ。

今では東京都内に230棟超の賃貸オフィスビルを抱え、新規の開発に要する資金を既存ビルからの賃貸キャッシュフローで賄えるほどだ。売却益ではなく賃貸益に依存する住友不にとって、ビルの売却は看過できない。

直近の賛成率は55%にとどまる

買収防衛策に対する株主の反応は二分している。

議決権行使結果の開示が義務付けられた2010年以降に開催された株主総会での賛成率を振り返ると、2010年は59%、2013年は60%、2016年は66%。直近の2019年は55%と過去最も低く、薄氷を踏む差で可決された。

同業の三菱地所は2019年の株主総会をもって買収防衛策を廃止しており、不動産業界における買収防衛策の意義が問われている。

カギを握るのは政策保有株式の動向だ。近年、住友不の株式を買い増している取引先が散見される。2021年3月期にはビル建設などで関係の深い大成建設と鹿島建設が、それぞれ200万株を買い増した。JR東海は2021年3月期、それまで保有していなかった住友不株を新規に96万株取得した。

株式を持ち合う意義の検証だけでなく、買収防衛策が株主の立場からして妥当かを評価することも求められる。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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中村 正毅 東洋経済 記者

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一井 純 東洋経済 記者

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