みずほFGや住友不動産、注目すべき「株主総会」 異質な会社提案に株主はどう判断を下すのか
「株主総会での議決権行使に向けて、賛否を議論する対象の『注意銘柄』になっている」
大株主のある金融機関が声を潜めてそう話すのは、荘内銀行(山形県鶴岡市)と北都銀行(秋田市)を傘下に持つ、フィデアホールディングスだ(以下、フィデア)。
議論の対象となっているのは、フィデアが2022年5月に発表した取締役の選任案。中でも問題視しているのが、社外取締役の西堀利氏が、非業務執行の社内取締役に就くという人事案だ。
社外取から社内取に移ること自体に、問題があるわけではない。上場企業の間では、社外取として招いた「プロ経営者」をほどなくして社長(代表権を持つ社内取締役)に据えるといった事例がいくつもあるからだ。
指名委員会の委員長自ら社内取に
異質に映るのは、西堀氏が2015年から7年にわたって社外取を務めており、さらには取締役会議長と役員人事を担う指名委員会の委員長でもあるということだ。
そもそも西堀氏は旧富士銀行の出身で、過去にはみずほ銀行の頭取を務めている。フィデアで主導権を握る荘内銀は、安田財閥の流れをくんでおり、歴代のトップの多くは旧富士の出身者だ。
現に、荘内銀頭取を務め、現在フィデアの社長に就いている田尾祐一氏も旧富士の出身であり、入行年次でいうと西堀氏の6年後輩にあたる。
それゆえ、西堀氏は社外取でありながら「社長もまったく頭が上がらない、内外ともに認めるグループの“最高権力者”」(フィデア関係者)になっているという。
その最高権力者が、自らが委員長を務める指名委員会での議論を経て、社内取締役に就こうとしていることに、一部の大株主がガバナンス上の懸念を抱いているということだ。
フィデアは西堀氏の社内取締役起用について「地方銀行に求められる経営革新のスピードアップのためには、同氏が社外取締役としての活動の中で得た知識や経験を活かしつつ、今後は社内の立場から当グループの経営改革について引き続き様々な提言をしてもらうとともに、経営改革を執行部とともに推進してもらうのが適切と判断」したと、株主総会の招集通知で説明している。
企業統治に詳しい川北英隆・京都大学名誉教授は、西堀氏が2015年からフィデアの社外取を務めていることから「社内取に移るのであれば、もっと早い段階が適切だった。自らの人事の議論に参加しなかったとしても、影響を及ぼしたとみるのが普通で、透明性のきわめて低い人事だ」と指摘する。