「この動きが一定数の賛同を集めれば、今後同様の戦略を取るアクティビストが増えてもおかしくない」
市場関係者たちがそう口をそろえ、動向を注視しているのが、6月23日に開催されるエレベーター・エスカレーター機器大手・フジテックの株主総会だ。注目を集めている理由は香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの動きにある。同社はフジテック株を約9.7%保有する大株主である。
オアシスは、内山高一社長の再任に反対する運動を繰り広げている。株主提案こそしていないものの、5月中旬に特設サイトを設立し、61ページにもわたるプレゼンテーション資料を公開。内山社長に関わる疑惑を列挙し、ほかの株主に再任に反対するよう呼びかけている。
周到すぎるプレゼン資料
オアシスは内山社長が個人の利益のために権限を濫用していると指摘している。具体的には、内山社長個人が保有する法人に対してフジテックが貸し付けを行ったことや、内山家が私的利用するための高級マンションをフジテックが取得した疑惑があることなど、複数の要素が挙げられている。
ただ、オアシスの資料はこうした疑惑の指摘だけにとどまらない。内山家が保有する不動産の登記一覧や高級マンションの間取りと推定価格、20年以上前の有価証券報告書に記載されている貸付の記録など、疑惑の根拠となる情報を詳細に記載しているのだ。
とくに衝撃を与えたのは、内山氏がフジテックの社員に自宅の掃除をさせていたという指摘。フジテックの制服を着ている掃除中の人物を写真に収め、その後フジテックの事業所に戻る車も尾行して写真を掲載している。
この資料をみた市場関係者からは「まるで探偵のようだ」という声が上がる。「オアシス社内の人間だけでなく、弁護士や探偵のような外部のプロを使って周到に作り上げられているのは間違いない」(同)とみられている。
これまでアクティビストがこうした資料を作る際には、公開情報を基に経営の問題を指摘するものが多かった。が、今回の案件は経営ではなく社長個人を標的としているほか、公開情報以外の要素も盛り込まれている。こうした手法が増えてくれば、経営者はますます警戒を強めなければならなくなる。
オアシスの指摘に対し、フジテック側は5月末に外部の弁護士による調査結果を公表。指摘された案件について内山氏が参加していない取締役会で決議されていること、監査法人や税務当局からも疑義が呈された事実は認められないことなどを理由に「法的にも、企業統治上も問題ない」との見解を示した。
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