フジテック社長、株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で、再任議案を取り下げ

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株主総会の決議では、事前に議決権行使をするケースは少なくない。ギリギリまで事前行使の状況を見て、判断したとセス氏はみているわけだ。内山氏の再任に対しては、米議決権行使助言会社のISSやグラスルイスも反対を推奨していただけに、相応の反対票が集まっていたとしても不思議ではない。

これに対しフジテック側は、「票読みとは一切関係がない」と否定。内山氏の再任については、「継続的に議論を尽くし、(株主総会の)前日に取締役会で決議した」としている。

内部告発で新たな疑惑も浮上

騒動はまだ終わりそうにない。フジテックが内山氏の取締役復帰の可能性をにおわせるからだ。

フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている。

一方のオアシスも「フジテックを守る取り組みは続け、より強化していく」(セス氏)としている。今回、内山氏の疑惑に関する資料を公開した後、新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じているという。

新たな疑惑はどんなものなのか。第三者委員会の委員は独立性のあるメンバーになるのか、調査の結果はどうなるのか。焦点は数多く残されており、今後も波乱含みの展開が予想される。

他社にとっても、今回の動きは無視できないものと言えるだろう。オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目を浴びていた。それにより、再任議案撤回に至ったことは、新手の手法が一定の効果を示したといってよい。

セス氏も「すべての投資先に対して、今後のデューデリジェンス(投資対象の価値・リスク調査)の一環になると捉えている」としている。今回のオアシスの手法は、これからのアクティビストたちの新たな武器となる可能性を秘めている。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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