「訪日客」受け入れ再開で株価が上がる意外な業種 訪日客数の増加に日経平均株価はどう反応?

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一方、図表2の右表はもう1つの方法を用いて、インバウンドの回復で株価の上昇が期待される業種を選んでみました。具体的に次のように選別を行いました。まず、毎月、新聞に“インバウンド”という言葉が使われた記事の件数をカウントします。その数が増えるときは世の中でインバウンドに注目が集まっているときと考えられます。

そして記事件数の増減と株式収益率の連動性が高い業種を選んだ結果が図表2の「インバウンドの記事数が増える時に株価の上昇が大きい業種」です。記事件数をカウントする対象は、日本経済新聞社が発行する各紙、全国紙、一般紙、専門紙、スポーツ紙・夕刊紙の合計187紙とします。

統計的な分析方法については、先ほどご説明した図表2の左表と同様に感応度分析を行います。記事件数の前年同月比が2倍となった場合に、東証33業種指数のそれぞれの前年同月比が何%上昇するかを求めました。

世界的な景気の回復によって訪日観光客が増える傾向

その結果、空運業が7.5%上昇するとの結果で第1位となりました。2つの方法での分析結果でともに1位となったことから、インバウンド回復で最も恩恵が大きい業種として強い裏付けを持っているといえそうです。

第2位が石油・石炭製品、第3位が機械となっています。これらの業種は世界的な景気敏感業種です。世界景気が回復すると石油などの燃料需要が増えることから石油、石炭製品の業界の恩恵は大きくなります。

機械に関してはさまざまな分野の企業が含まれますが、例えば建設機械などの銘柄で言えば、中国などのアジア景気が拡大して、建設需要が高まると恩恵が大きい企業も見られます。このような世界的な景気回復が旅行者数を増やして、訪日観光客が増える傾向とも連動していると見られます。

つまり“原因”は世界的な景気の回復によって機械の需要が増えることにあります。石油・石炭製品の業界にメリットがあるということは“結果”になるのですが、日本への旅行者が増えるという“結果”も、同時に起こるということです。

このように、図表2で取り上げた業種は統計的な結果だけでなく、その背後にある理由もわかりやすく、インバウンド回復で連動高が期待される業種と考えられます。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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