「ブロックチェーン」知らないと損する重要背景 記録が改竄できず、ギグエコノミーと違う理由

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M型の先にあるのがDAO(分散型自立組織)です。ただその前に、過渡期のモデルとして、インターネットを介して従業員が企業と単発の仕事を契約する働き方である「ギグエコノミー」についても少し見てみましょう。

ウーバーやエアビーアンドビーなどに代表されるギグエコノミーは、企業の階層的な構造にとらわれることなく、長期的なコミットをせずに、好きなときに自由に働けるのがメリットでしょう。会社と雇用契約を結び、毎日決まった時間に会社に行って仕事をすることが求められる従来型の働き方と比較すると、ギグエコノミーでの働き方は一見すると分散化が進んだ仕組みのように見えます。

しかし、ギグエコノミーでは従業員1人ひとりが会社の意思決定に影響を与えることはありませんし、あくまで会社が定めたルールに従い働くことになります。また、仕事内容は会社が事細かに決めており、従業員は指示通りに仕事を遂行することが求められます。従業員が労働時間と引き換えに賃金を得るという仕組みは、従来型の企業組織とさしたる違いはありません。

DAOは組織が完全にフラットで分散

対照的にDAOは、組織が完全にフラットで分散されており、組織の方針を上層部が決めるような仕組みにはなっていません。上司はもちろんいませんし、部や課といった単位もありません。

DAOに参加するメンバーは、投票によって意思決定に関与できます。会社の事業計画、財務管理のあり方、マーケティングやPRの方針、ブランドの路線、資金調達のタイミングなどの重要な決定事項に対して、一人ひとりのメンバーが決定権を持つのです。

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DAOの運営で最も重要なのは透明性です。一部の人間が「密室」で意思決定するようなことをDAOは許容しないのです。

DAOへの参加方法ですが、メンバーになるには、一般的には、そのDAOが発行するガバナンストークンを持つ必要があります。ガバナンストークンは、ブロックチェーン上で管理され、株式会社における議決権のような役割を果たします。より多くのガバナンストークンを持つほど、投票でより大きな影響を与えるのが基本です。具体的には、スナップショットなどDAOの投票用のプラットフォームにウォレットを接続し、投票権を行使します。

前回:「Web3.0と仮想通貨」今さら聞けない基本中の基本(6月21日配信)

千野 剛司 Binance Japan代表

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ちの たけし / Takeshi Chino

慶應義塾大学卒業後、2006年に東京証券取引所(東証)に入社。2008年の金融危機以降、東証傘下の清算機関「日本証券クリアリング機構(JSCC)」においてOTCデリバティブ取引の清算集中プロジェクトを主導したほか、経営企画を担当。2016年以降、PwC JapanのCEO Officeにて経営陣の戦略的な議論をサポート。2018年、暗号資産交換所の米Krakenに入社し、2020年3月より日本法人代表を務めた。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)では副会長、日本暗号資産ビジネス協会では理事を歴任。2022年7月より現職。

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