2020年に新型コロナウイルスの世界的大流行が始まって以降、香港政府は海外からの入境者に対する(中国本土に準じた)厳格な水際対策を続けている。そんななか、香港の金融業界では海外から派遣された駐在員や専門知識を持つ人材の流出に歯止めがかからなくなっている。
香港金融管理局(HKMA)の余偉文(エディー・ユー)総裁は6月13日、同局職員の2021年の離職率が7%に上ったことを明らかにした。過去の離職率はおおむね3~4%だったのと比較して大幅な上昇だ。
余氏によれば、2021年の離職者はIT(情報技術)分野の人材が最も多かった。彼らはIT技術を駆使した金融機関の検査・監督や、同局の業務プロセスのデジタル化などに携わっていたという。
HKMAは香港政府の金融監督機関であると同時に、事実上の中央銀行でもある。香港の金融業界で最もステータスの高い組織の1つだ。香港政府の開示資料によれば、2021年初め時点の職員数は948人。しかし定員は1005人であることから、全体の5%を超える欠員が生じている状況だ。
行政長官は「将来を楽観」と言うが…
人材流出が顕著なのはHKMAだけではない。香港証券先物委員会(SFC)の雷添良(ティム・ルイ)主席は、2月7日に開催された香港立法評議会の金融サービス委員会で、SFCの職員の離職率が2020年の5.1%から2021年は12%に上昇したことを明らかにした。
雷氏によれば、離職者の増加の背景には金融業界内での人材争奪戦の激化や、香港から海外への移民の増加がある。そこでSFCは、職員の報酬や昇進の見直し、働き方の多様化などあの手この手の対策を打ち、人材の呼び戻しを図っている。SFCの2022~2023会計年度の人件費予算は、前年度より1億4100万香港ドル(約24億円)増額された。
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は6月12日、金融専門人材の流出問題について公開の場で次のように発言した。
「香港の(国際金融センターとしての)優位性は、他所がたやすく取って代われるものではない。(北京の)中央政府も香港を強力に支援してくれている。香港には内外の人材を再び引き寄せる力があり、私は将来を楽観している」
(財新 駐香港記者:文思敏)
※原文の配信は6月13日
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