「奇跡の56歳」君島十和子さんに見る錆びない人生 40代後半から50歳頃までの停滞期を越えて…

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振り返ってみれば、40代後半から50歳を過ぎる頃までは、仕事においては停滞期だったと語る。

「思春期の子育てと良い化粧品を開発することに懸命になっていて、外の世界に目が向いていなかったんです。SNSを全然やらなかったし、メディアに出ることも控えていたし。その結果、世間の流れから置いていかれたところはあると思います。

2019年に遅ればせながら始めたInstagramも楽しんでやっていますけど、フォロワー数はさほど多くはありません(2022年5月現在、約6万7000人)。時代と人の変化を見ていなかったからですよね。たくさんの人に美容の豊かさを伝えたい、商品を届けたい美容家としては失格でした」

今を生きる人と関わる仕事を続けたいならば、社会と接続し続け、時代と同期していくことは必要不可欠だ。

「誰しも人生は紆余曲折ありますし、人それぞれ子育てや介護など家のことで忙殺されている時期は、仕事をするのも大変。社会と関わることすらも面倒になることもありますよね。でも、仕事じゃなくてもいい。少しでもいいから、社会と関わりながら、個人でいられる場所や時間を持つことは大事なんじゃないかなと」

アイデンティティーだけが人生の地図になる

「50代半ばまで山も谷も歩いてきて確信しているのは、自分の人生を生きていいし、生きるべきだということ。家族は何よりも大切だし、誰かのためにも生きたい。そこは今も変わりないです。でもね、妻でも母でもない、一人の人間、君島十和子としてのアイデンティティーを保ち続けることが人生においてどれだけ大事なことか。

会社を経営していると、最終決定は自分で行わなければならないし、その責任は自ら取らねばなりません。その時、頼りになるのは自分のアイデンティティーだけです。でも、人生ってそういうものですよね。誰も決めてくれないし、誰のせいにもできない。予測不可能なことも多々あるけれど、自分が好きか嫌いか、良いか悪いか。直感と経験を信じて決断しなければ、進めない」

十和子さんは、仕事や社会を通じてアイデンティティーを培ってきたし、人生のターニングポイントでそのアイデンティティを問われてきた。だからこそ、今後も仕事を続け、社会とも関わり続けたいという。

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