ピーチの羽田就航を手放しで喜べない事情 「一番乗り」の和製LCCに課せられる制約

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エアアジアXは羽田の深夜早朝にしか発着しない(撮影:尾形 文繁)

一方で、ピーチが羽田に入り込める余地があるのは深夜早朝帯の発着枠にまだ余裕があるからだ。監督官庁である国土交通省は2014年11月から、羽田の深夜早朝時間帯に新規就航や増便する国際線について、3年間の時限措置で着陸料を減免する政策をスタート。これに併せて、東京モノレールや京浜急行終電後の深夜1時頃に羽田空港と都心(東京・銀座・秋葉原線、新宿・池袋線、渋谷線、大鳥居・蒲田・品川線)や横浜を結ぶアクセスバスの実証運行も2014年10月にスタートした。

それでも深夜早朝の羽田は公共交通機関の便が悪い。出発便こそ使い方次第では便利なのかもしれないが、不便なのは到着便だ。現在は深夜24時ごろまでの到着であれば実証運行のバスもあり、都心などへの移動はできるが、それでも25時(深夜1時)以降に到着口に出る運航スケジュールになった場合には、朝5時過ぎまで移動手段がほぼなくなる。いくら都心に近いといっても、羽田から深夜にタクシーで都心に向かったら平気で5000円を超えてしまうなど、気軽に移動できる近さではない。空港内で朝を待つのが現実的になる。

羽田周辺の宿泊施設は貧弱

羽田周辺は宿泊施設が貧弱だ。国際線ターミナルには、2014年9月に新しいホテル「ロイヤルパークホテル ザ 羽田」がオープンしたが1泊当たり1万円台中盤~2万円台という宿泊料金は、LCCの利用者には高い水準で使いにくいだろう。空港直結の「羽田エクセルホテル東急」も同様の相場だ。国内線第1ターミナルには簡易宿泊施設「ファーストキャビン」もあるが、深夜24時40分が最終バスとなり、それ以降はタクシーを使うしかアクセス方法がない。そもそもファーストキャビンは部屋を施錠できず、貴重品も宿泊者が自分で守らなければならず、いずれも、コストパフォーマンスがいいとはいえない。

羽田を深夜早朝に発着するLCCとしてうまくやっているのは、羽田-香港線で先行する香港エクスプレスだろうか。羽田到着便は23時55分着と5時5分着、羽田出発便は1時10分発、6時10分発で交通手段の有無に応じて割と柔軟に使い分けできるような設定になっているが、これは限定された例だ。

ピーチに限らず、羽田を深夜早朝に発着するすべての航空会社にとって、羽田がせっかくの24時間空港である点を生かせていないのはもどかしいだろう。カギは、深夜早朝バスの拡充にありそうだ。日本は利用者がいない時間帯には運行しないという風潮があるが、運行しているという安心感が飛行機の利用促進に繋がることも事実である。仮に、深夜の実証運行バスを深夜1時~5時まで各1時間に1本程度を運行することが実現できれば、新たな路線の就航や増便を検討する航空会社にとっても好材料となるはずだ。

国際化を目指す羽田が名実共に眠らない空港になれるのか。和製LCCの就航を控え、アクセスや宿泊施設などのインフラの不備によって航空会社が制約を受けていることを改めて強調しておきたい。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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