誰も本心では信じていない民意に全てを委ねる訳 「国民の意思」がデモクラシーを崩壊させる

民意という亡霊がうろついている
「ヨーロッパをひとつの亡霊がうろついている、共産主義という亡霊が」というよく知られたマルクスの言葉にならえば、今日、「日本をひとつの亡霊がうろついている、民意という亡霊が」といってもさしつかえなかろう。
もちろん、マルクスとはまったく違った意味である。亡霊がやがて世界を支配することを期待したマルクスとは逆に、今日、われわれにとりついている亡霊は、われわれを破滅へと導くものかもしれない。
ここで亡霊という比喩が多少意味をもつのは、それが、実体でもないが、かといってまったくの幻覚でもない、という点にあろう。確かな存在でもないが、まったく存在しないというわけでもない。有と無の間を揺れ動く、この不確かであやふやなものがわれわれの社会に憑依(ハウント)している。憑依されたものは、「ミンイ、ミンイ」と騒ぐが、それが何を意味しているのかは誰もわからない。「ミンイ」では言葉の重みにかけるので、「国民の意思」と政治学風に言い換えても事態は変わらない。
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