元宝塚・瀬奈じゅん「特別養子縁組で気づいた事」 彼女が感じた「1つじゃない」家族と幸せのカタチ

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特別養子縁組で私たち夫婦のもとへ息子がやってきたのは、2017年の初夏でした。初めて顔を見た瞬間のことは今でもはっきりと覚えています。

私たちがいる待合室のドアが開き、新生児用のベッドがカラカラと音を立てて運ばれてきて、その中に小さな赤ちゃんがいました。まだ目も開いていないのに、私たちのほうを一生懸命見ようとする、あの表情としぐさはきっと一生忘れないでしょう。「やっと会えたね」と思うと胸がいっぱいになりました。

©SHINJI SENDA

実際に子育てが始まってからは、血のつながりがどうこうなんて考える暇はまるでなくて。とにかく忙しくて、毎日必死。

息子を迎えたのと同じ時期に、愛犬が要介護になってしまったので、慣れない育児と愛犬のお世話、そして復帰したばかりの仕事で手一杯。まとまった睡眠時間が取れず、今思い返しても「当時はわけがわからないくらい大変だった」としか言えないです(笑)

「気配りは必要、でもそれも悪いことじゃない」

息子は、もうすぐ5歳になります。一般的なご家庭との違いを聞かれたら、「何一つ違いません」というのが率直な実感です。私が思い描いていた「夫と一緒に子どもを育てながら、温かい家庭を築く」という家族像もなんら変わっていません。

ただ1つだけ違うとすれば、私たちには養子であることを本人に伝える「真実告知」が必要だということ。早いうちから真実告知をしたほうが、子どもが受ける心理的な衝撃が少ないという統計があることから、息子がまだ言葉を理解できないくらい小さい頃から日常的に伝えるようにしてきました。

「ママのおなかでは産めなかったから、あなたを産んだお母さんがママに託してくれたんだよ」と。伝える際には、「本当のお母さん」といった表現は使わないように気をつけています。私も産んでくださった方も、どちらも「本当の母親」ですから。

こうして気を配るべきことはあるものの、それはむしろいいことだとも思うんです。言葉にしなくてもわかり合えるのが家族、と思われがちですが、素直に心情を吐露し合うことも時には大切。言葉にしてお互いの思いを確かめ合うことが必要な私たちだからこそ、親子間でも夫婦間でも、会話がすごく多いんですよ。

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